昨日の午後に施設入所中の91歳が、「両足が紫色になっている」ということで紹介されてきた。連絡を受けた時は、血流低下から壊死に陥っているのかと思ったが、正しくは「両側下腿~足の浮腫が悪化して、紫斑が出ている」、だった。
2週間前に39℃の発熱があり、嘔吐が1回、下痢が2回あった。施設内でインフルエンザウイルスとノロウイルスの迅速検査をしたが、両方とも陰性だった。上気道症状はない。翌日も高熱があったが、翌々日には37℃台になって、その後は解熱した。点滴と抗菌薬投与(ピペラリシンを1回点滴静注して、その後レボフロキサシン500mgを1週間内服)をしていた。血液検査は炎症反応だけしていて、白血球増加とCRP上昇があった。尿路感染症か腸管感染症かわからないが、何らかの細菌感染だったらしい。
もともと両下腿~足は浮腫が軽度にあるが、5日前から浮腫が増加して、発赤・熱感が出現した。2日前か同部位に紫斑が出現して、最初は点状・斑状だったが、集簇して一面の紫斑になっていた。
皮膚科で少数だがIgA血管炎の患者さんを診ている。いっしょに診てもらうと、「IgA血管炎でしょうね」、と言われた。懐かしい名前では、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病になる。先行感染があって、発症したという経緯だった。
一通り検査したが、肺炎・尿路感染症は否定された。白血球数5400・CRP3.3で、d-ダイマー4.4と軽度に上昇している。IgA653(110~440)・IgG2106(870~1800)で、IgA血管炎でいいようだ。尿蛋白・尿潜血(沈査も)は陰性で、その時点では腎症は否定的だ。(正確には鑑別のためANCAとクリオグロブリンも検査する必要がある)
食事はある程度とれて、発熱もない。付いてきた家族に「入院しますか」、と訊くと、「入院はとんでもない」、と言う。なんでも前回整形外科に入院した時に(上腕骨骨折)、認知症の不穏で早期に帰されたそうだ。患者さんは入院する気はなく、「帰る」、としか言わない。
皮膚科医はそのまま経過をみるのもあると言っていたが、プレドニン内服で経過をみることにした。施設の看護師さんに訊くと、施設にプレドニンがあるそうで、20mg/日で継続して2週間後に再受診とした(丸めなので病院から処方できない)。その間に悪化すれば入院で診ると伝えた。