昨日内科クリニックから紹介されたインフルエンザと肺炎の91歳男性は、今年になってから、食事の飲み込みが悪くなっていた。入院してからも、薬を飲むのは無理です、と看護師さんから報告があった。
今朝泊まり込んでいた奥さんと話をした。クリニックからの診療情報提供書には、肺炎が疑われることと、食事摂取が難しくなっているとのみ記載されていたが、実際はもっと突っ込んだ話もされていた。往診して自宅で看取るのは難しいといわれたそうだ。そこでは数が多くなって往診先も制限していたが、看取りとなると24時間対応になってしまう。
1週間はインフルエンザと肺炎の治療をして、ある程度軽快したら嚥下訓練を行うが、嚥下は無理と判断される可能性が高い。その場合、経管栄養や高カロリー輸液を希望しますが、と訊いてみた。奥さんはどちらもしなくていいと言う。自然な形で看取ってほしいそうだ。この患者さんは大学医学部の献体の申し込みをしていた。体がボロボロになるまで治療してほしくない、苦しまずに自然に死なせたい、と奥さんは言う。
そう言われても、肺炎の治療を中止というわけにもいかない。1週間は肺炎の治療をすること、その後に嚥下訓練も行うが、経口摂取できなければ最低限の末梢静脈からの点滴のみを行うこと、末梢血管からの点滴が困難な時は皮下注に切り替えることで同意された。
奥さんは、きれいな体で解剖してもらいたい、と言われたので、できるだけ希望に沿った対応にしますと答えた。お仕事は何をされていた方ですかと訊くと、高校で英語の教師をしていましたという。当方の卒業した高校でも勤務されていたが、女子高での勤務が長かった。お子さんはおられず、残っている兄弟も高齢でお見舞いに来るわけでもない。まだ元気な時に夫婦で話し合っていたことに基づいて、奥さんが患者さん本人の希望を伝えたという形になる。