昨日地域の基幹病院消化器内科から、88歳女性が転院してきた。出血性胃潰瘍で当院から搬送したので、正確には当院に戻ったということになる。
化膿性脊椎炎・硬膜外膿瘍で当院の整形外科に入院していた。先月の日曜日に吐血・下血(タール便)があり、その日の整形外科当番だった大学病院の先生が、基幹病院に救急搬送していた。(当院の消化器科は重症でない場合の平日のみ対応になっている)
NSAID投与による出血性胃潰瘍と診断されて、通常の内視鏡的止血術が行われた。行われたが止血が得られず、最終的にはOTSCで止血したと診療情報提供書に記載されていた。
OTSCって何?と思った。調べてみると、内視鏡的(消化管壁)全層縫合器Over-The-Scope Clip(=OTSC)だった。消化管穿孔や通常の方法では治療できない消化管出血に用いる、(写真を見ただけだが)すごいクリップだった。食道静脈瘤結紮術(EVL)の要領で、内視鏡先端に付けたキャップ内に消化管の全層を吸引して(場合によっては鉗子で引っ張り込んで)大きなクリップをかけるというものだ。これは知らなかった。
「今後は吐血・下血が再発再燃しても、貴院でできる範囲で対応して下さい」、とあった。家族の話では、「ふだん行っていない方法で処置しました。やれるだけのことはやりました。」、と言われたそうだ。これ以上は勘弁して下さい、ということだろう。なにしろこの患者さんは、非代償性肝硬変(原発性胆汁性肝硬変)があり、化膿性脊椎炎・硬膜外膿瘍も治ってはいない。
認知症がない点だけはすばらしいが、ちょっとベットアップしても背部痛・腰痛があり、食事摂取も進まない状態だ。末梢血管は点滴静注できそうな血管がほとんどない。CVラインを入れていたらしいが、転院時は抜去されていた。
ご家族には、どのくらい持ちこたえるかわからないが、とにかくやってみましょうとお話した。
こんなクリップ。