なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

胸部大動脈瘤・大動脈解離

2016年11月20日 | Weblog

 金曜日の夕方に、83歳女性が前々日から続く上腹部痛で受診した。圧痛があるようなないようなではっきりしない。食事は普通にとっていた。神経内科外来に3年前の脳梗塞後遺症で通院していた。入院サマリーには右半身麻痺と失語症とあったが、何とか会話は可能だった。喘息としてホクナリンテープも処方されていた。2年前に急性心不全で循環器科に入院していた。発作性心房細動・大動脈弁閉鎖不全症・うっ血性心不全として、抗凝固薬・利尿薬・強心薬などが処方されていた。

 微熱のもあった。胸部聴診上、呼吸音は正常だが、脈は不整だった。心電図では頻脈性心房細動になっている。胆嚢結石もある。血液検査では炎症反応上昇と凝固異常(FDP・Dダイマー上昇)があった。ざっと胸腹部(単純)CTをみると、以前からあった胸部大動脈瘤が拡大していた。CTによる胸部大動脈瘤のフォローは3年前が最後になっていた(径47mm)。単純CTで、大動脈瘤内の内腔の濃度がもやもやしている印象があった。喘息の既往があり、ステロイドを使用して造影CTを追加すると、胸部大動脈瘤内から腹部にかけて大動脈解離をきたしていた。 

 心臓血管センターのある専門病院に連絡すると、受けてくれた。介助で椅子生活というADLで、抗凝固薬内服・喘息(心臓喘息かとも思ったが、気管支喘息らしい)もあって何だか申し訳ないが、診てもらうしかない。さっそく救急搬送した。この前同じ病院に大動脈解離の患者さんを救急搬送したが、大動脈ステントを挿入して病状が安定したと報告が来ていた。

 

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扁桃が気になる

2016年11月19日 | Weblog

 昨日、25歳女性が咳が続いて内科外来を受診した。内科新患は大学病院から応援の先生だったが、既往歴が気がかりだったらしく、問診の段階で連絡が来た。

 この方は8月に組織球性壊死性リンパ節炎(菊池病)になった。2か所の内科医院を受診して、その後当院の内科新患も受診したが、発熱とリンパ節腫脹が続いた。整形外科クリニックの看護師さんなので、そこの先生(以前は当院の勤務医)から内科常勤医に診てほしいと連絡が来た。すっかり経過も症状も出来上がっていたので、菊池病と判断された。生検はしなかったが、ステロイド(プレドニン)で順調に治った。

 今回は、先月末にかぜ症状で当院の内科新患(大学病院の応援医師)を受診した。症状は38℃の発熱と咽頭痛で、数日で軽快治癒したという。その後から咳が出る様になり続いている。日中よりは夜間が多く、お風呂の湯気を吸うとせき込む。睡眠中に咳で起きることはない。朝6時の起床時に咳が出る。喘鳴は自覚していない。鼻の症状はなくて後鼻漏もない。痰はほとんどなくて、空咳に近いらしい。小児期に喘息で通院した既往があるが、その後に喘息症状はなかった。

 聴診上は異常なしで、強制呼気でも喘鳴はなかった。感染後の咳嗽でいいように思うが、咳喘息の始まりなのかもしれない。吸入ステロイドで経過をみることにした。

 「それと」、と扁桃の話になった。左側の扁桃がちょっとポリープ゚様に飛び出している。形としては、先細りの形。色調は正常の扁桃(何でもない右側)と変わりない。痛いわけでもないが、違和感があるという。頸部リンパ節が気になるというが、どこがと訊いても、ご本人が頸部を探ってこのあたりというくらいで(せいぜい小指頭大)、圧痛もなかった。前回のことがあるので気にしてしているのだろう。後頸部~肩も気になると言われたが、ただのコリだった。

 耳鼻咽喉科外来(外部の応援医師)に紹介した。扁桃の単なる過増殖と思われるが、念のためと生検されていた。扁桃も生検できるんだ、とちょっと驚いた。それにしても当院の外来は外部の医師が多い。

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スタチンもエゼチニブもだめ

2016年11月18日 | Weblog

 一昨年から糖尿病・高血圧症。脂質異常症(高コレステロール血症)で通院している71歳男性が、3日前からの筋肉痛で受診した。主に肩と上腕の痛みで、把握痛もある。両側大腿部にも痛みがあるが、上肢に比べると軽度だった。

 症状だけ聞くと、リウマチ性多発筋痛症(PMR)と思われたが、しゃがんだ姿勢からの起き上がりはそれほど支障なかった。炎症反応と筋原性酵素を提出した。

 ただこの方は今年の3月にずっと投与してきたスタチン(リピトール)による筋障害をきたしていた。もともと投与前からCKが正常より若干高めに出ていた。慎重に筋肉痛とCK上昇の有無をみてきた。筋肉痛はなくて、CKは投与前より軽度にすこしだけ高くなるが、横ばいだった。脂質異常は正常化していた。スタチンを中止すると筋肉痛は軽快して、CK(一時4000まで上がった)も改善したが正常域にはならなかった。

 脂質異常症は無治療で経過をみていたが、かなり高値になる。9月からエゼチニブ(ゼチーア)を投与してみた。10月に来たときは大丈夫だった。そして今回スタチンの時と同じことになった。CKが9000に上昇して、AST・LDHも上がっている。白血球数が少し高めだが、CRP・血沈は正常域だった。腎機能は今のところ正常域。また念のため多発性筋炎の検査も提出したが、薬剤性と判断された。

 肩上腕の痛みがあるので、筋肉が弱ってはまずいと思って、腕立て伏せとスクワットをしたそうだ。それは逆効果と言うと、そうも思ったが、一人暮らしで常に動けなくなったら困るという気持ちがあるので、ついやってしまったという。自分で車を運転して来院しており、検査で広い院内を歩いたが、特に問題なかった。食欲は良好だった。

 エゼチニブの副作用と判断された。内服を中止して、来週初めに再受診とした。腎機能も含めて慎重に経過をみることになる。これはもう脂質異常症は経過観察だけが、古い薬を考慮するしかないようだ。2回も起こして、申し訳ありませんと伝えた。

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「オスラー病なんだけど」

2016年11月17日 | Weblog

 「オスラー病の患者さんで、相談に乗ってほしい」と、昨日消化器科医から言われた。40歳男性で、鉄欠乏性貧血のため内科から鉄剤が処方されていた。何代かの内科医師がその都度担当している。ほとんど薬だけになっているが、少し中断していたらしい。鼻出血で耳鼻咽喉科も受診していた。

 その日は下腹部痛で受診していて、診断は尿管結石だった。腎盂~尿管が拡張している。膀胱の数cm上にあるが、急に詰まったというより、その位置で停滞しているらしい(非常勤の泌尿器科医と相談した)。疼痛は自然に治まってきた。腎機能が悪化する前に手術するかどうか、泌尿器科常勤医のいる基幹病院に紹介することにした。

 通称オスラー病だが、正確には遺伝性出血性毛細血管拡張症Hereditary hemorrhagic telangiectasia(HHT)だ。この患者さんは、親・その親・そして同胞3名に同病があり、遺伝性を確認することができる。姉は脳動静脈瘤(破裂か)で亡くなっている。

 黒色便もあるという。貧血の程度はHb7g/dlでふだんと変わりなかった。鉄欠乏性貧血で、慢性出血と判断される。鼻血を飲み込んでいる可能性もあるが、胃粘膜など消化管のtelangiectasiaから出血することもある。消化器科として放置できなかったらしく、さっそく上部内視鏡を行ったが、十二指腸に若干telangiectasiaがあるが処置するものではなかった。

 前にいた病院でオスラー病の患者さんがいて、上部消化管内視鏡検査を行った記憶があるが、この患者さんだったかどうか(同胞の誰か?)はわからない。

 今日は右胸水貯留の87歳男性に、胸腔穿刺を行うと、血性胸水が引けてきた。血液検査でCEAとCA19-9が高く、肺癌による癌性胸膜炎が疑われる。細胞診待ちだ。

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副作用いろいろ

2016年11月16日 | Weblog

 糖尿病の46歳女性(かなり肥満でコントロール不良)にSGLT2阻害薬(ジャディアンス)を処方したが、カンジダ膣炎になってしまった。GLP1受容体作動薬+メトホルミン+SU薬+αGIの処方に、前回追加していた。当然中止。インスリンを入れるとまずます肥満になりそうだ。今日はとりあえずGLP1受容体作動薬を、ビクトーザから長期処方可能になっているトルリシティに変更してみた。

 糖尿病の62歳女性は、DPP4阻害薬+メトホルミン少量だったが、メトホルミンを漸増してから嘔気が出た。元の量(初期量)に戻したが、それでも嘔気がするという。以前は飲めていたので、心因もあるのかもしれない。良い時でHbA1c6%台前半、悪くても6%台後半なので、DPP4阻害薬のみで経過をみてから追加処方を考慮することにした。

 糖尿病の56歳女性は、糖質制限+メトホルミン初期量でHbA1cが5.7%くらいと良好だった。高コレステロール血症で肥満が目立ったころに、ゼチーアを処方していた。筋肉痛が気になって、ゼチーアを中止したら軽快したという(スタチンは処方してない)。まあ、最初にスタチンを処方しなかったことも今思うと変だが(本来セカンドチョイスだから)、減量効果はないものの理屈としてコレステロール吸収抑制の方がいいという判断で出していた(経緯を忘れたが、たぶん)。

 先日は高血圧症の高齢男性が、カルシウム拮抗薬で歯肉肥厚をきたして、歯科医からの指摘を受けて受診した。けっこうあるものだ。大抵は想定内の「やっぱり」という副作用だが、?という時もある。

 肺癌・癌性胸膜炎の80歳女性に、ミノサイクリンで胸膜癒着術を施行したが、結局効果がなくもないが癒着成功とはいかなかった。昨日、初めて取り寄せたタルク(ユニタルク)を注入した。自分としては初タルクだが、病院でも初になるらしい。うまく効くといいが。

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ありふれているようで、なかなかの歴史あり

2016年11月15日 | Weblog

 今日は少し時間があったので、あまり深く診ていない?入院患者さんの既往歴を確認していた。

 76歳男性が1週間前に救急搬入された。一人暮らしで、近くにいる妹さんが世話をしていた。朝方にベットから落ちたらしい(落ちていたところを発見された)。嘔吐も1回あった。疼痛部位を聞いても要領を得ないが、脊椎圧迫骨折・大腿骨頸部骨折などはなかった。発熱があり、検査すると筋原性酵素と炎症反応が上昇していた。

 2年前に急性心筋梗塞(下壁)を発症して、胸痛は自覚せず、心不全症状が進行してから入院した。循環器科で治療していったん改善したが、頻脈性心房細動をきたしてから増悪してしまった。心臓センターのある病院に転送されて、PCI治療などで軽快して戻ってきた。この既往があるので、急性心筋梗塞再発が考慮された。心電図、CK-MBなど総合的に判断して、心臓ではなく打撲による骨格筋由来ということになった。心電図では以前と変化がないが、Ⅱ・Ⅲ・aVFにpoor rを認め、Ⅰ・aVl・V5-6にST上昇様の変化があって、側壁梗塞を示唆して気持ち悪い。

 胸部CTでみると、右肺下背側に胸水とそれに接した浸潤影様の陰影がある。左にもわずかに胸水があり、心不全としての所見なのかもしれないが、他に感染巣もなく、肺炎・胸膜炎疑いとして経過をみることになった。抗菌薬投与で炎症反応は順調に改善して、抗菌薬は中止した。筋原性酵素も正常化した。タール便が出て、上部消化管内視鏡検査をしたが、線状びらんのみで顕性出血はなかった。その後タール便はなくなり、貧血も改善した。発作性心房細動で抗凝固薬とPCI後で抗血小板薬が出ていたが、いったん両者を中止して、抗血小板薬だけ再開している(普段はずっと洞調律)。

 この方は内科医院(高齢の先生が亡くなって廃院)に通院していて、6年前に当院に紹介された時の紹介状に(別の症状で)、リウマチ様関節炎でプレドニン10mg/日が処方されていた。4年前に顔面の蜂窩織炎で入院したが、その時に担当医になった。抗菌薬投与で順調に改善して退院した。処方に関しては継続として、いじらなかった(再評価しなかったというのが正しいか)。

 その1か月後に発熱で入院した、内科の若い先生(その後退職)が担当した。入院したのは知っていたが、直接診ていなかった(臨床力があるので任せられるから)。退院時サマリーには、発熱・肩肘関節痛があり入院とある。抗菌薬は使用せず、リウマチ性多発筋痛症の増悪として、プレドニンを10mgから20mgに増量して軽快したとある。その後外来で継続して診ていたが、申し送りのサマリーには、「リウマチ性多発筋痛症疑い。可能ならプレドニンを漸減して下さい(プレドニン8mg/日)。」とあるので、診断自体本当かという気持ちだったようだ。

 入院時の症状は改善して退院するだけだが、一人暮らしで以前より認知力低下が目立ち、施設入所の調整が必要になりそうだ。プレドニンをどうしようかと思った。明らかに関節リウマチらしい関節所見はない(MCP関節、PIP関節は問題ない)。プレドニンを増量した時の肩肘というのが疑問だ。偽痛風のような気もする。プレドニンを増量して効いたというのが合うのではないか。まあ10mg/日内服継続で増悪があるかというのもあるが。この方はずっとCRPが陰性になったことはない。今回も血沈は70mm/時と高値だった。

 関節リウマチをプレドニンだけで診ていた結果のような気もするし、よくわからない。プレドニンを漸減中止を目指すのか、若干漸減して5mg/日くらいで継続が無難なのか。どちらも根拠はない。それにしても、内科医院でのプレドニンを処方する前の最初の所見はどういうものだったのだろう。本人に訊いても、もう覚えていない。

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消化器病学会教育講演会

2016年11月14日 | Weblog

 日曜日は消化器病学会の教育講演会(東北支部)に出ていた。会長は福島医大教授で、いつの間にか福島医大に消化器内科学講座が独立してできていた。

(非アルコール性脂肪性肝疾患) 肝臓学会から「NASH・NAFLDの診療ガイド2015」が出ている。以前は単純性脂肪肝だったが今は非アルコール性脂肪肝NAFL)で、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は同じ。正確には、肝病理組織所見(肝細胞風船様変性、マロリー・デンク体、脂肪化、線維化)でなされるが、病理医によって、また同じ病理医でも、症例によって組織所見の取り方がわかれるので、ガイドには典型的な病理組織像を多数載せている。

 肝生検の適応は、他の肝疾患との鑑別が困難な場合と、NASHを疑う場合。Matteoni分類(風船様変性と炎症)はNASHかどうかをみるもので、Brunt分類はNASHの程度(gradingとataging)をみるもの。

 NAFLDで抗核抗体(ANA)が陽性になるのは20%で、ANA陽性NASH(自己免疫性肝炎AIHではない)はIgGが高く、AIH scoreが高くなる。ANA陽性NASHより、肥満(NAFLD併発)AIHは肝障害が強く、IgGはさらに高値となる。NASHとAIHのoverlapもある。ステロイドは肥満を助長するので、まずはダイエット(トランスアミナーゼ高値ではそうも言ってられない)。

 NASHの確率されたバイオマーカーはない。腹部エコー・CTは脂肪沈着30%以上で高い診断能がある。MRIは脂肪沈着の検出でUS・CTより優れている。MRエラストグラフィー(MRE)は線維化を検出できる(たいていの病院はそんなの持ってない)。

 NALFDの予後は死亡オッズ比が1.5で糖尿病があると3.5になる。死因は悪性腫瘍・虚血性心疾患・肝疾患自体。肝発癌はNASH肝硬変で11.3%(1割)/5年、C型肝硬変は30.5%。NAFLD-HCCは女性は肝硬変で発癌する傾向があり、男性では肝硬変まで行かなくても発癌する。NAFDLがあるとHCCが描出しにくいので、発癌時の腫瘍径が大きい。

 自分としてはNASHが疑われれば、基幹病院消化器内科の肝臓専門医に紹介するだけだが(生検の適応も含めて御高診下さいとなる)。

(C型慢性肝炎) AST30U/L超、あるいは血小板数15万/μL未満が抗ウイルス療法の適応。ALTが80未満ならは肝炎はそう進行しないという論文が出てから、それが独り歩きして50~60なら大丈夫と思われたりした。30くらいで正常と判定していたが、インタフェロン治療後に10になって、正常の3倍だったことがわかったりしたそうだ。実際はASTの上昇に司令して肝細胞癌(HCC)は発生しやすくなる(熊田先生)。

 インターフェロンフリーのDAA(direct acting antiviral)が出てから、(インターフェロンが使えなかった)高齢者や代償性肝硬変でも使用できるようになった。genotype1に使用するダグラタスビル+アスナプレビル併用療法は、耐性変異がなければSVR(24週で血中HCV-RNAが感度以下)は95%。ただしnon-SVRはすべて治療痕に多剤耐性になる。(アスナプレビル自体による肝障害に注意)

 ソホスブビルは薬剤耐性変異をきたしにくい。ソホスブビル+レジパスビル配合剤は12週で97~99%がSVRになる。ソホスブビルは腎排泄で重度の腎障害(GFR<30)や透析例では禁忌。

 genotype 2には、ソホスブビル+リバビリン併用を行う。95%以上でSVRになる。ただし過去に肝硬変でnon-responderまたはrelapseだった場合は85%弱。リバビリンで軽い貧血(Hb1.8低下)になるが、ペグインターフェロン+リバビリンのHb3低下に比べれば問題ない。

 今後の課題はSVR後発癌(HCC)ということだ。演者の赤羽先生は震災後も石巻に残って活躍されている(偉い先生だ)。

  

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橋本脳症は常識?

2016年11月13日 | Weblog

 山中克郎先生の「医療探偵 総合診療医」光文社新書を読んでいた。最初の症例1は橋本脳症だった。橋本脳症?。知りませんでした。橋本病に伴う脳症で、甲状腺機能異常によらないそうだ(7割が甲状腺機能正常)。自己免疫的機序による脳症で、αエノラーゼN末端を標的とする抗体(抗NAE抗体)が発現する。好発年齢は20~30歳代と60~70歳代と二峰性分布になる。急性脳症型(意識障害・精神症状)が多いが、精神病型(うつ病・統合失調症)・運動失調型もある。ステロイドが効果があり、診断がつけば治せる疾患だ。

 これまで当たったことはあるのだろうか。意識障害・神経症状・精神症状が続いていて、原因がわからなければ、診断がつかないまま診ることはない。神経内科へ紹介することになる。診たことはないのだろう(たぶん)。treatble dementiaの鑑別として、甲状腺機能検査は出すが、正常域だとそこで甲状腺疾患は除外していた。橋本脳症は常識でしたか。

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残念な結果でした

2016年11月12日 | Weblog

 10月に入院した78歳は、頭痛・発熱・炎症反応上昇があった。肺炎や尿路感染症による症状を疑って抗菌薬で経過をみたが、改善しなかった。最近の頭痛・側頭動脈の圧痛・顎跛行・血沈100以上から巨細胞性動脈炎と判断した。プレドニン投与で症状が消失して、炎症反応も陰性化した。糖尿病が悪化したが、インスリン強化療法で血糖も改善した。退院して、外来で経過をみることになっていた。

 退院前日に高熱・頭痛・上背部痛が出現した。ステロイドが入っているので、感染症の併発を疑ったが、はっきりしたものは指摘できなかった。検査でもともと糖尿病腎症があった腎機能が一気に悪化して、凝固系の異常(Dダイマー著増)もあった。頭部CTと胸腹部CTで異常はなかった。改善していた視力障害も悪化した。プレドニン中等量で治療していたが、不足だったと考えて大量投与にした。

 しだいに解熱してきて、食事も少し食べていた。何とかしのげるかと思ったが、入院時にあった喘鳴がひどくなり。肺に陰影が生じてきた。肺胞出血を疑ったが、主に片肺だけで喀血はなかった。プレドニン増量時から抗菌薬も併用していたが、効いていない。後手後手に回った治療に反応せず、数日の経過で亡くなられた。

 何だろう何だろうと思ってるうちに終わってしまった。正確な診断はできていない。巨細胞性動脈炎という診断自体が正しいのかどうか。大動脈系の動脈炎をきたすタイプもあって、それは通常のタイプよりも10歳くらい若い方でみられるらしいが、それだったのか。それでも、当初は軽快して退院するところまでいけた(はずだった)のに、残念な結果だった。 

 家族親族はいるそうだが、一切かかわらない関係になっていて、後見人の方(実際はさらにその代理の方)がお世話していたが、事務的な手続きに関わるだけだった。最後は誰もいない病室で、バイタルの低下を見守るだけになった。血管炎の何かだとは思うが。

 

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診れなくはないが~心房細動・心不全・肺炎?

2016年11月11日 | Weblog

 ひとり暮らしの88歳女性は、心房細動で循環器科に、慢性C型肝炎で内科に通院していた。循環器科の処方は抗凝固薬だけ、内科の処方はウルソだけというシンプルなものだった。10年以上担当していた循環器科の先生が開業したので(内科外来の担当は大学病院医師)、そちらでまとめて診てもらうつもりだったという。

 先月から労作時に息切れがあったが、ひどく苦しいわけではなかったのか、そのまま様子をみていた。今日は内科外来の予約日で受診した。肝機能検査は変わりなかったが、炎症反応が上昇していた。胸部X線など画像検査を勧められたが、そっちは循環器科で診てもらうと言って、そのまま新規開業のクリニックを受診した。聴診で湿性ラ音(coarse crackles)が聴取されて、そのまま当院に戻された。

 発熱はなく、先月からの亜急性の経過だった。血圧は150//90と高めだ。酸素飽和度は意外に96%(室内気)と保たれていた。食事摂取は普通にできている。両側下腿に浮腫があった。胸部X線・CTでは心拡大・両側胸水・肺うっ血浮腫を認めた。BNPは以前の150が300台になっていた。陰影は肺野全体ではなく、肺炎の浸潤影の可能性もある。安定していた心房細動が肺炎併発で心不全を呈したのかもしれない。肺炎・心不全(心不全・肺炎?)として両者の治療をすることになりそうだ。

 当院の循環器科医1名は週末不在だった。聴診上、弁膜症らしい心雑音はなく、心房細動の心拍数は正常域から若干頻拍だった。これまで利尿薬などは処方されていない。血管拡張薬と利尿薬に反応して良くなりそうにも思われる。内科で入院にして、改善しない時に循環器科へ搬送するのも考えた。考えたが、患者さんのためには、最初からちゃんと循環器科で診てもらうのがいい。地域の基幹病院循環器科に相談したところ受けてもらえることになり、救急搬送した。当院の事情を知っているので配慮してくれているようだ。付き添いできていた娘さんは、そちらの病院の方が近いので便利だと喜んでいた。

 それにしても、ふだんの処方がシンプルすぎる気がする。前からBNPが正常より高かったし。アーチスト極少量+ARB少量+ループ利尿薬少量とか、循環器科処方でよくみかけるけど、どうなんだろう。

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