日曜日は消化器病学会の教育講演会(東北支部)に出ていた。会長は福島医大教授で、いつの間にか福島医大に消化器内科学講座が独立してできていた。
(非アルコール性脂肪性肝疾患) 肝臓学会から「NASH・NAFLDの診療ガイド2015」が出ている。以前は単純性脂肪肝だったが今は非アルコール性脂肪肝NAFL)で、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)は同じ。正確には、肝病理組織所見(肝細胞風船様変性、マロリー・デンク体、脂肪化、線維化)でなされるが、病理医によって、また同じ病理医でも、症例によって組織所見の取り方がわかれるので、ガイドには典型的な病理組織像を多数載せている。
肝生検の適応は、他の肝疾患との鑑別が困難な場合と、NASHを疑う場合。Matteoni分類(風船様変性と炎症)はNASHかどうかをみるもので、Brunt分類はNASHの程度(gradingとataging)をみるもの。
NAFLDで抗核抗体(ANA)が陽性になるのは20%で、ANA陽性NASH(自己免疫性肝炎AIHではない)はIgGが高く、AIH scoreが高くなる。ANA陽性NASHより、肥満(NAFLD併発)AIHは肝障害が強く、IgGはさらに高値となる。NASHとAIHのoverlapもある。ステロイドは肥満を助長するので、まずはダイエット(トランスアミナーゼ高値ではそうも言ってられない)。
NASHの確率されたバイオマーカーはない。腹部エコー・CTは脂肪沈着30%以上で高い診断能がある。MRIは脂肪沈着の検出でUS・CTより優れている。MRエラストグラフィー(MRE)は線維化を検出できる(たいていの病院はそんなの持ってない)。
NALFDの予後は死亡オッズ比が1.5で糖尿病があると3.5になる。死因は悪性腫瘍・虚血性心疾患・肝疾患自体。肝発癌はNASH肝硬変で11.3%(1割)/5年、C型肝硬変は30.5%。NAFLD-HCCは女性は肝硬変で発癌する傾向があり、男性では肝硬変まで行かなくても発癌する。NAFDLがあるとHCCが描出しにくいので、発癌時の腫瘍径が大きい。
自分としてはNASHが疑われれば、基幹病院消化器内科の肝臓専門医に紹介するだけだが(生検の適応も含めて御高診下さいとなる)。
(C型慢性肝炎) AST30U/L超、あるいは血小板数15万/μL未満が抗ウイルス療法の適応。ALTが80未満ならは肝炎はそう進行しないという論文が出てから、それが独り歩きして50~60なら大丈夫と思われたりした。30くらいで正常と判定していたが、インタフェロン治療後に10になって、正常の3倍だったことがわかったりしたそうだ。実際はASTの上昇に司令して肝細胞癌(HCC)は発生しやすくなる(熊田先生)。
インターフェロンフリーのDAA(direct acting antiviral)が出てから、(インターフェロンが使えなかった)高齢者や代償性肝硬変でも使用できるようになった。genotype1に使用するダグラタスビル+アスナプレビル併用療法は、耐性変異がなければSVR(24週で血中HCV-RNAが感度以下)は95%。ただしnon-SVRはすべて治療痕に多剤耐性になる。(アスナプレビル自体による肝障害に注意)
ソホスブビルは薬剤耐性変異をきたしにくい。ソホスブビル+レジパスビル配合剤は12週で97~99%がSVRになる。ソホスブビルは腎排泄で重度の腎障害(GFR<30)や透析例では禁忌。
genotype 2には、ソホスブビル+リバビリン併用を行う。95%以上でSVRになる。ただし過去に肝硬変でnon-responderまたはrelapseだった場合は85%弱。リバビリンで軽い貧血(Hb1.8低下)になるが、ペグインターフェロン+リバビリンのHb3低下に比べれば問題ない。
今後の課題はSVR後発癌(HCC)ということだ。演者の赤羽先生は震災後も石巻に残って活躍されている(偉い先生だ)。