なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

長く経過をみたアルコール性慢性膵炎

2016年11月09日 | Weblog

 懐かしい症例を見直してみた。初診時70歳の男で、アルコール性慢性膵炎の経過を10年近くみたことになる。通常慢性膵炎の患者さんは急性膵炎(急性増悪)で入院しても、その後外来通院しないことが多い。この方は様々な合併症をきたし、その後も膵性糖尿病で通院していた。ただし治療の肝心なところは、全部大学病院消化器内科と消化器外科で行われた。

 まず初診は2006年4月で、急性膵炎で入院した。普通に治療して軽快退院している。

 2006年10月には深部静脈血栓症からの肺血栓塞栓症で入院した。肺血栓塞栓症は軽快したが、食事摂取での急性膵炎(いずれも五分粥から全粥へのアップで)を2回繰り返した。MRCPなので、主膵管が鮮明ではないが、尾部膵管の拡張を認め、体部の主膵管狭窄が疑われた。ERCPによる膵管の評価と治療目的で大學病院消化器内科へ紹介した。

 手術や内視鏡処置はなく、大学病院の外来で経過観察となった。2007年5月に門脈血栓症(脾静脈から連続)をきたして、腹水貯留を認めた。そのまま大学病院へ搬送した。その後、大学病院外科で慢性膵炎に対する手術(Freyの手術、膵頭部核出術+膵管空腸吻合術)が行われた。

 2008年5月膵内出血(血腫形成)をきたした。脾動脈瘤からの出血らしい。大学病院へ搬送して、脾動脈のインターベンション治療(塞栓術)が行われた。

 

その後、膵性糖尿病となり、処置をした大学病院外科から当院へ戻された。インスリン強化療法を外来で継続した。患者さんはその後、飲酒を再開していた。禁酒しないと命取りになることをお話したが、やめなかった。糖尿病の治療はきちんと継続していた。手術のおかげ(膵液がドレナージされる)と病状の進行による膵酵素の枯渇?で膵炎症状をきたさないので、飲んでも大丈夫と思っていたのだろう。

 2013年2月に呼吸困難で救急搬入された。左胸腔内に出血をきたしていた。検査でDIC相当になっていた。救急外来から病棟に上がったところで心肺停止となり、そのまま亡くなった(79歳)。日直をしていた消化器科の先生にお世話になった。機序はわからない。

  

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