なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

喘息の講演会

2016年11月10日 | Weblog

 火曜日は喘息の講演会に行った。シムビコートの製薬会社の共催。ガイドラインに沿った喘息の話と長引く咳の話だった。

 「喘息予防・管理ガイドライン201」で変わった点。診断では呼気NO濃度(FeCO)が重視されるようになった。治療では、ICS/LABAにレルベア・フルティフォームが加わったこと、ステップ3・4でスピリーバレスピマットが使用できるようになったこと、ゾレアはIgE1500IU/ml以上で使用できること、SMART療法が高く評価されたこと。合併症としてはACOSと好酸球性副鼻腔炎が強調されたこと。

 ACOSには2つの説があって、ひとつはDutch hypothesisで、単にCOPDと喘息が合併したものとする。もうひとつはBritish hypothesisで、演者はこちらの考え方だという。もともと喘息があってCOPDを併発したAsthma with COPD componentと、もともとCOPDがあって喘息を併発したCOPD with asthmatic componentを区別する。前者は喘息があって、DLCO<80%またはHRCTでLAAがあるもの。喘息患者の1/4に相当して、1/4は非喫煙者。後者はCOPDがあって、喘息症状が加わったもので呼気NO濃度の上昇を認める。この区別する考え方が臨床的に合うと思った。

 3週間以上咳が続いていたら、肺炎・肺癌を鑑別するために胸部X線をとる(実際は1週間でとる?)。自覚症状(咳・痰・息切れ・胸痛)の強い弱いと、胸部X線の所見のありなしで、分けて考える。自覚症状が強くて胸部X線で所見ありは、肺炎・肺結核・進行肺癌・心不全・間質性肺炎。自覚症状が強くて胸部X線所見なしは、気管支炎・喘息・COPD(気腫性変化はあるが)。自覚症状が弱くて胸部X線で所見ありは、早期肺癌・NTM・石綿肺。自覚症状が弱くて胸部X線で所見なしは、健常者(というかただのかぜ)。

 かぜでは症状のピークが72時間以内に過ぎるので、4日目に症状が悪化している時は抗菌薬を使用しているという。つまり3日目の症状と4日目の症状を比べて判断するそうだ。インフルエンザは発熱と咳に強い全身症状を伴う。インフルエンザ迅速試験は、以前はがりがりと擦っていたが、そうではなくて、陽性率を上げるコツは奥まで入れることと、入れてからしばらくそのままにして粘液を良くしみこませること

 鑑別として化膿性咽頭炎を上げた時に、抗菌薬はペニシリンを使用すると言われたが、その際に呼吸器感染症にはセフェム系(第3世代)は使用しないと強調された。マイコプラズマは人生で3回くらいかかる(本当?)。子供からうつるが、マクロライド耐性が多いので、成人で使用するならミノマイシン(骨に集積するので、小児や妊婦では使用できない)。

 感染性の咳は短期間にピークになり、しだいに軽減してくる。一方アレルギー性の咳は、軽快悪化を繰り返して継続する。アレルギー性の咳の多くは咳喘息で、夜間~早朝に症状が強く、季節性(春秋に悪化)の傾向がある。

 困った咳の重要なポイントは、原因がひとつとは限らないこと。上気道炎で始まり、後鼻漏・喘息が顕在化して、胃食道逆流症が増悪(咳による腹圧上昇)して、精神的に参る(心因性咳嗽)と進む。それぞれの原因に対する治療を行い、咳が治まってから1剤ずつ中止して、最終的にはICSのみ残す。

 喘息では、好酸球性気道炎症~気道過敏性~気道狭窄~そして喘息症状が起きている。気道炎症に対してICS、気道狭窄に対してLABAで対応する。抗IgE抗体療法は喘息の2~3%のみ適応になる。気道炎症は治療して治まるまで3か月はかかる(症状は早くとれるが)。

 好酸球性気道炎症のバイオマーカーとして呼気一酸化窒素濃度(FeNO)を測定する。カットオフ値は感度・特異度を考えると22ppb。35ppb以上ならまず喘息。製品はNIOX(ナイオックス)VEROで、値段は130万円(実際の購入価はもっと安い?)で、保険点数は240点なので元を取るのは難しいと。喀痰中好酸球は1%でも(1個でも)陽性ととる。

 喘息の治療は、ICS/LABAで開始する。改善すればICS単剤へステップダウンする。気道炎症とリモデリングを抑えるために、1)ICS/LABAの固定容量(1日2階2吸入ずつ)で開始する。2)SMART療法(Symbicort Maintenance and Reliever Therapy)を行う(有症状時に追加吸入)。(この辺は宣伝)

 しだいに吸入手技がいいかげんになるので、反復する吸入指導により呼吸機能が改善する。最初に息をできるだけ吐いて、一定の速度で長く吸入する。讃岐うどん(40~70cm)をすするように吸入するといいそうだ。薬剤放出は0.1秒で後は、薬剤を気道の奥まで送り込むための吸気になる。ドライパウダーが十分に吸えない高齢者や肥満者ではエアゾルを考慮する。

 まあまあ参考になったので、行ってよかった。

コメント
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