なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

APTT延長

2018年09月26日 | Weblog

 外科医からAPTT延長の患者さんのことで相談された。S状結腸癌の68歳女性だった。

 その患者さんは大腸癌健診で便潜血陽性で二次検査となった。当院の消化器科で大腸内視鏡検査を行ってS状結腸癌と診断された。平坦な隆起で中心にびらんを形成している。腹部造影CTでは病変を指摘できないくらいの大きさだった。2型進行癌とも言い難い。消化器科医はSM深部へ浸潤していて、内視鏡治療の適応はないと判断していた。

 術前検査で唯一ひっかかったのが、APTT延長だった。67.5秒(25~33)で、再検しても72.3秒だった。出血症状・血栓症状は何もない。PTは正常域でFDP・Dダイマーも正常域だった。麻酔科医が追加検査を指示していたが、内科にも訊いてみたという経緯だった。

 これはどれほどの意味がある異常値なのだろうか。最初に思ったのは、あまり意味がないんじゃないかだった。しかし実際に手術する外科医としては気持ち悪いだろう(手術中に出血がコントロールできなくなったらと考えてしまう)。

 第Ⅷ因子・Ⅸ因子、第Ⅷ因子インヒビター、ループスアンチコアグラントなどの外注検査が提出されたので、その結果をみてから考えることにした。

 当方では、後天性血友病の患者さん(高齢女性。認知症があり、地域包括ケア病棟で施設待ち)が入院している。この患者さんはS状結腸癌が契機となって、後天性血友病が発症していた。

 最終的には、一度他院の血液内科外来に紹介してコメントをもらうということになりそうだ。

 

 金沢大学血液内科で,血栓止血学について記載している。以下はその一部。

APTTが延長する出血性疾患は、

1)血友病A友病B(deficiency)
2)von Willebrand病(deficiency)
3)後天性血友病(inhibitor)(第VIII因子インヒビター)
4)ビタミンK欠乏症(deficiency)
5)その他

APTTが延長する血栓性疾患
は、

1)ループスアンチコアグラント(inhibitor):抗リン脂質抗体症候群の診断に抗カルジオリピン抗体とともに不可欠です。
2)先天性XII因子欠損症(deficiency)
3)その他

 臨床に直結する血栓止血学

 

 医学書院の記事には、「PT,APTTともに重要な止血のスクリーニング検査ですが,試験管内で行う検査であり,生体内での凝固能を正確に反映するものではないことを忘れてはなりません。特にAPTTが延長している場合でも,その原因が第VIII因子と第IX因子の大幅な低下(20%未満)でない限り,大きな出血を起こすことはないと考えられます。」とあった。

 

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