なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

全体像がわからない

2018年09月05日 | Weblog

 ASTで話題になった症例。48歳男性が、先々週の土曜日に腰痛で整形外科に入院した。入院時から炎症反応の上昇・肝機能障害・腎機能障害があったが、後に発熱・意識障害もきたして、週明けの月曜日に地域の基幹病院救急科に転送となった。

 当院で施行した血液培養(セフトリアキソン投与後)は陰性だったが、転送先で施行した血液培養からMRSAが検出されたそうだ。細菌検査室から当院の検査に問い合わせがきたという。検出菌がMRSAということで、病態がますますわからなくなった。

 先月中旬に車を運転して、自損事故を起こした。歩いて自宅に帰る途中で、道路の側溝に落ちて腰部を打撲した。整形外科クリニックを受診して、腰椎椎間板症(患者さんの話)と言われたそうだ。

 腰痛がひどくなり、自宅で休んでいたが(寝込んでいた?)、その日は動けなくなって両親が救急要請した。発熱はなく、腰痛で動けないという訴えだったので、外科系疾患としての搬入だった(土日は内科系・外科系の2名の日当直医で対応)。外科は大学病院からのバイトの若い先生だった。

 腰椎単純X線、さらに胸腹部CTも施行されたが、骨条件で胸腰椎を見るためのようだ。腰椎自体には異常がなかった(と判断された)。整形外科の当番医に連絡がいって、整形外科で入院となった。翌日から発熱があり、意識レベルも低下した。外科の当番医に相談されて、抗菌薬(セフトリアキソン)が開始された。そして翌月曜日の救急搬送となっている。

 ASTで話が出た時には腰部打撲したこともわからなかったので、「腰痛・発熱だったら化膿性脊椎炎じゃないの」、と適当なことを言っていたが、カルテを確認して経過を追ってみた。全体的な病態がよくわからない。

 整形外科医が診療情報提供書に記載したように、、CTで見る限りは明らかな異常は認めない。化膿性脊椎炎については腰椎MRIは施行していないので、正確にはわからない。MRIは必須の画像検査になるだろう。腰痛が打撲によるものとすれば炎症反応上昇と関係ないことになるが、両下肢の脱力があったという記載もあり、腰椎・腰髄自体の異常は考える必要がある。

 内科としては、胸部CTで左下肺野背側に浸潤影を認めるが、肺炎で全体を説明できるかどうか。レジオネラ感染だったらありうる?。血液培養のMRSA検出をどう考えればいいのか。MRSA肺炎はそうあるものではない。感染性心内膜炎や化膿性脊椎炎の起炎菌ならありうる。

 経過をみてもさっぱり見当がつかない。当院での対応は難しいので、救急搬送したことは正解だった。受けた方は相当悩むと思うが、専門医集団がズバッと診断してしまうかもしれない。

 

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