木曜日の夕方に、前日からしゃべりにくくなったという72歳男性がクリニックから紹介されてきた。意識清明で麻痺はなく、感覚障害もなかった。嚥下障害もない。充分に聞き取れるくらいの軽度の構語障害だった。
検査を一通り入れて、結果が出るのは時間外になるので、神経内科医に検査結果を診てもらうよう声をかけた(当院は神経内科1名で時間外には対応していないので、ちょっと待っていてもらった)。洞調律で心房細動はない。高血圧症と虚血性心疾患?で、降圧薬と抗血小板薬(バイアスピリン)が処方されていた。ポツンとラクナ梗塞が出るだろうと予想された。
頭部MRIで左放線冠に1㎝の細長い形態の脳梗塞を認めた。両側基底核と左視床に複数の陳旧性ラクナ梗塞があるが、有意な症状はなかったようだ。神経内科で入院して、オザグレルとエダラボンの点滴静注が開始された。
神経解剖と画像を結び付けた本でわかりやすいものを探しているが、なかなかないものだ。PT向けの本の方がいいものがある。側脳室天井レベルで「ハの字」に見える側脳室の脇に放線冠があり、そこで中心前回の各部位からの神経線維が1本になる。放線冠は、腹側(顔側)から顔面・上肢・体幹・下肢の順序で神経線維が並んでいる。この患者さんでは顔面に相当する。