Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

国立大劇場『十月歌舞伎公演『一谷嫩軍記』『春興鏡獅子』』2等B席3階センター

2013年10月18日 | 歌舞伎
国立大劇場『十月歌舞伎公演『一谷嫩軍記』『春興鏡獅子』』2等B席3階センター

16:30からの開演で早退するつもりでしたが仕事が忙しく『熊谷陣屋』の相模が小次郎の首を受け取りの嘆くの場からの観劇になりました。もったいないことをしました…。

『熊谷陣屋』途中より
相模の嘆きから拝見。真ん中の席だった為、迷惑をかけるよりはと立ち見(4階)です。立ち見だと視界が邪魔されず俯瞰して観られるので疲れますが芝居に集中も出来ます。

魁春さんの相模からは子を宿し直実と都落ちし、そして出産し子、小次郎との三人の生活、そんなものが見事に垣間見えました。相模@魁春さんは家族を細腕で守ってきたの芯の強さ女です。なぜ、こんなことに…そのやるせなさ。小次郎の首をかき抱くように打掛けですぐに覆ってしまう、その仕草が印象的。

そして直実@幸四郎さんのナイーブさを感じさせる苦しさ、罪悪感に満ちた表情が悲劇を浮き立たせます。

弥陀六@左團次さんの気骨ある武士の顔が強い表現が、「人の情」ゆえの人の儚さ哀れさをストレートに伝えてくる。

今回はこの相模、直実、弥陀六の三人の在り様がとても際立っていたように思います。


『春興鏡獅子』
三階席にも気がビンビンと伝わってくる素晴らしい踊りでした。

弥生/獅子@染五郎さん、弥生の可愛らしさ、嫋やかさ。端正な美貌ゆえ連れてこられた時の戸惑いっぷりにどこか被虐美を感じさせる。女小姓が御前で緊張しながら無心に踊っている、というそのものがそこにありました。所作事が丁寧ながら心得として身についている、そんな感じ。そして踊るうちに空気に華やかさが満ちてくる。そして獅子頭に引っ張られる場では見えない力に勢いよく引っ張られ、身体が制御できなくなる様が見事。そして獅子、凛としたその姿は美しい若獅子。身体に気が満ち溢れ迸る。そのキレのよい動きには惚れ惚れします。観ていて元気が出てくる、本当に霊力が宿ってるんじゃないか?と思わせるようなそんな獅子でした。

胡蝶@團子ちゃんと金太郎くん、息があってしっかりと踊っていました。二人で霊山に飛翔する可愛い蝶々でした。團子ちゃんは勢いよく元気に、金太郎ちゃんは音のど真ん中でカッチリと。