Snowtree わたしの頭蓋骨の下 *鑑賞記録*

舞台は生もの、賞賛も不満もその日の出来次第、観客側のその日の気分次第。感想というものは単なる個人の私感でしかありません。

歌舞伎座『杮葺落五月大歌舞伎 第二部』 3等B席上手寄り

2013年05月04日 | 歌舞伎
歌舞伎座『杮葺落五月大歌舞伎 第二部』 3等B席上手寄り

『伽羅先代萩』
竹の間と飯炊きがないかなりの短縮Ver.です。藤十郎さんの「飯炊きの場」は義太夫の糸に絶妙に乗りつつも心持ち本位の政岡で絶品ですので拝見したかった。残念です。

「御殿」
政岡@藤十郎さん、涙を流して熱演でした。藤十郎さんの政岡は以前に比べ体は動けなくなっていますが台詞や心持の在り様が素晴らしかったです。とことん乳母でありそして母親である政岡。

八汐@梅玉さん、今までよりパワーアップ。以前はこういう悪役を演じていても梅玉さんの子供好きな甘さがどこかしらに漂っていましたが今回はそれがありませんでした。品のよさのなかにサディスティックなものを見せる。低体温系な冷酷さでかなり怖い八汐でした。この造詣、個人的にかなり好きです。

沖の井@時蔵さん、得意役ということもあり活躍の場のある「竹の間」が無くてもしっかりと存在感がありました。

「床下」
荒獅子男之助@吉右衛門さん、大きさと厚みのある男之助です。

仁木弾正@幸四郎さん、姿がまずは仁木らしい凄みがあり妖気も漂い「いかにもらしい」仁木弾正。


『廓文章』「吉田屋」
この演目ほんとに苦手なんです…あのまったり感が眠気を誘う。でも今回はまったり他愛もなさが歌舞伎座開場のおめでたい気分とマッチして良かったです。仁左衛門さんと玉三郎さんコンビはの華やかさにうっとり。何も考えずに楽しめました。それでも途中ちょっとウトッとしてしまったことは内緒(^^;)

伊左衛門@仁左衛門さんは姿の美しさと品の良い愛嬌のあるぼんぼん風情に年を得たことで獲得した可愛らしさが加わり、ふんわりとしたファンタジックな空気感に包まれてなんともいえない味わい。今までの仁左衛門さんのなかでも一番良かったです。

夕霧@玉三郎さん、年齢不詳の圧倒的な美貌でこれまたファンタジィーな味わいで、仁左衛門さんと玉三郎さんコンビだからこそのおとぎ話的な「吉田屋」がそこにありました。

おきさ@秀太郎さん、言うことなしですね。じゃらっとした粘り気のある上方の空気を体現されていました。風貌、身のこなし、声質、台詞廻しがこういう上方狂言の世話物で一番活きる役者さんです。

喜左衛門@彌十郎さん、上方の雰囲気が薄いものの風格と押し出しがあり良かったです。

太鼓持@千之助さん、丁寧にきちんと。