イエロー・ハンカチーフ
2008年/アメリカ
山田オリジナルを超えられなかった
shinakamさん
男性
総合 70点
ストーリー 70点
キャスト 75点
演出 70点
ビジュアル 80点
音楽 70点
山田洋次監督・高倉健主演の「幸せの黄色いハンカチ」(’77)を33年振りにリメイク。もとはベトナム帰還兵の実話をNYポストのコラムに書いたピート・ハミル原作(幸せの黄色いリボン)を山田監督が映画化したので里帰りしたともいえる。
時代(77から08)と場所(北海道からニューオーリンズ)が変わってもシナリオが殆ど変わっていないのに驚くが、あまりにもオリジナルに縛られて却って失敗したとも言える。
主人公のキャラクターは同じでも高倉健とウィリアム・ハートでは見た目がまるっきり違う。いくらオスカー俳優でも健さんの寡黙で素朴な一途さは再現できない。彼なりの人物像は流石だが、どうみても労働者階級のエネリギッシュさは感じられない。<俗っぽいストーリーを輝かせたW・ハート>というほめ言葉が精一杯だ。
待つ女を演じたマリア・ベロはもっと大変だったろう。どんなに状況設定しても待っている女とは思えない。美しさはあっても倍賞千恵子のように儚げで耐える女は現代のアメリカ女性に望むのは夢物語だ。
桃井かおりと武田鉄也の役は現代アメリカに合わせ年齢を下げてクリスティン・スチュアートとエディ・レッドマンが演じている。2人とも今はブレークしているが、公開時は売り出し途上。C・スチュアートがトワイライト・シリーーズで注目され始めた頃で、日本では「パニック・ルーム」の子役と後の「スノー・ホワイト」の白雪姫で名が知られた若手女優。E・レッドマンも「レ・ミゼラブル」のマリウス役でブレークしたイギリス俳優で、ここでの先住民の子という設定もイメージギャップがあった。2人とも悩みを持ったティーン・エイジャーでは桃井・武田のコミカルな役柄とはスタンスが違っていた。
4人とも好演したにも拘らず本国・日本とも興行的には失敗に終わってしまった。結局ロード・ムービー本家のアメリカ・リメイク版が、山田オリジナルを超えられなかったといえる。
「不自然な設定や地域色に頼り過ぎる点に小作品の欠点がある。それでも、この作品が持つ不思議な空気に夢中にならずにいられない」というタイム誌の評が適切だった。
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