ラスト・ターゲット
2010年/アメリカ
カタルシスに溢れたハード・ボイルド
shinakamさん
男性
総合 80点
ストーリー 75点
キャスト 80点
演出 80点
ビジュアル 85点
音楽 75点
このところ新ジャンルのキャラクターに挑み続けているジョージ・クルーニーが独特の微笑みを一度も見せず、孤独な暗殺者を演じている。
監督はオランダの気鋭でフォトグラファーとして名高いアントン・コービン。
スウェーデンの雪野原でイキナリ狙撃された主人公は相手の2人と連れの若い女を射殺する。緊張感が走るスタートだ。男はローマに現れ組織の連絡係らしき男に次の行動指示を受けフィアットででかけたのが城塞都市カステル・デル・モンテ。詳しい情報のないまま男は何をするためにこの街へきたのか?ジャック、エドワード、ミスター・バタフライと呼ばれる自称写真家のジョージ・クルーニーの新たな魅力探しの旅に付き合うことになる。このあたりは70年代のフィルム・ノワールと雰囲気が似ていて、アラン・ドロンの「サムライ」を想起させる。カタルシスがたっぷりのハード・ボイルドだ。ただしストーリーは大どんでん返しというほどのインパクトはなく序盤の緊張感がシークエンス毎に何処まで続くかが勝負。
ロケ地イタリアのアブルッツォはイタリア中部地震で被害を受けた場所。雄大な風景を見事に映像化しながら孤高の暗殺者を繊細に描いて見せたコービン監督に独特の感性を感じた。ズームやハイスピードを使わずこれだけの映像美を醸し出す手腕はなかなかのもの。また重要な小道具・サプレッサー(減音器)銃制作のディテールを微細に描写した映像は見所のひとつ。
最初に狙撃されたイリーナ・ビョークランド、街の娼婦でヒロインのクララを演じたヴィオランテ・ブラシド、組織の一員で狙撃ライフルの受け渡し役・マチルダのテクラー・ルーテン。ジャックを巡る3人の女は何れも美女揃いでサービスカットもあるがフォトジェニックなので品は悪くない。
共演陣では街の神父のバオロ・ボナチェッリがユニークな存在感をみせている。原題「ザ・アメリカン」そのままに<アメリカ人は歴史を尊重せず、現在しか興味がない>といい、言動や手の特徴から写真家ではないことを見抜いてしまう。いっぽう神父でありながら修理工・ファビオという子持ちでもある。
孤高の中年男が愛する人ができたことで新しい人生を歩もうとする役を演じたJ・クルーニー。彼のファンと大人のハードボイルド好きには、充分満足の作品だろう。
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