・ 真のジャーナリズムを問うオスカーW受賞作。
「扉をたたく人」のトム・マッカーシーが監督・ジョシュ・シンガーと共同脚本化した、<01年カソリック神父が少年を性的虐待した「キーガン事件」をもとに、02年地元紙記者たちが特集記事を発表するまで>を緊迫感たっぷりに描き、作品・脚本のオスカーW受賞した作品ドラマ。
創業1872年の老舗新聞社「ボストン・グローブ」に親会社ニューヨーク・タイムズから派遣された新任編集局長マーティ・バロン(リーブ・シュレイバー)。
着任間もなく人気特集記事欄<スポットライト>チームに、神父による性的虐待事件を取り上げるよう指示。ベン・ブラッドリー部長(ジョン・スラッテリー)は、定期購読者の53%がカソリック信者で部数が落ち込むことを懸念するが、よそ者でユダヤ人の局長に押し切られる。
チームは、地元で人望厚いデスクのロビー(マイケル・キートン)、熱血記者マイク(マーク・ラファロ)、祖母が熱心なカソリック信者の紅一点サーシャ(レイチェル・アクアダムス)、地道なデータ分析専門のマット(ブライアン・ダーシー・ジェイムズ)の4人編成。
関係者から情報を得ながら、被害者から話を聞き出し、過去に起こった事件を膨大な資料から引き出して行く作業は、いうほど簡単なことではないことが丁寧に描かれる。
まさに事実を明らかにすることの難しさを実感する4人。ロビーはゴルフ仲間で親友の教会弁護士から「君のためにならない」と断られ、マイクとサーシャはキーガン事件の被害者・弁護士から取材してもはぐかされる。
まして被害者たちは低所得者家族の子供たちが多く、示談金で親が処理した事件の過去の傷に触れられたくない。加害者の神父が正直に話すはずもない。
だが、少数派の味方がいることも判明。被害者集団訴訟のアルメニア人弁護士・ギャラベディアン(スタンリー・トゥッチ)、被害者の会SNAP、聖職者犯罪心理療法士リチャード・サイプだ。
ただ事件を記事にしてもメディアの扱いはスポット的で、大きなうねりにはならなかった。<スポットライト>は地道な調査が裏付けで、単なる一神父の過ちではなく6教区30年で130人もの被害があったことを記事にしたことがキッカケで、全米さらに世界へ被害者訴訟が拡散していった。
地域と宗教という密接度を超えてタブーへ切り込んだころが真のジャーナリズムである証明となった。
古くは「大統領の陰謀」(76)で新聞記者、「インサイダー」(99)でTV局に憧れた若者がいたという。現在インターネットの普及でTV・新聞などのジャーナリズムの在り方が危機にある。まさに一石を投じた傑作だ。
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