・A・カウリスマキが本領を発揮した作品。
「浮き雲」のアキ・カウリスマキによる製作・監督・脚本のカンヌ国際映画祭グランプリ受賞作品。彼の作品には欠かせないカティ・オウティネンが主演女優賞を獲得している。
フィンランドの首都ヘルシンキ。街の片隅で暴漢に襲われ、半死半生で生き延びた男(マルック・ベルトラ)の物語。悲惨な境遇なのに、ユーモラスで淡々と再スタートしようとする男。
ほのぼのとしていて思わず応援せずにはいられない。カウリスマキの綿密な作りが登場人物に息を吹き込んでいて感動もの。尊敬する<小津映画の模倣>を衒いもなく取り入れ、光を活かした映像とカットもこの作品にぴったり。
2人の朴訥としたラブ・ロマンスを中心に、世間から弾き飛ばされ都会の片隅に住む人々が善いヒトばかりで、お金に目のない悪徳警官も何処か善良そう。
飼い犬が猛犬ハンニバルという名とはウラハラなメス犬なのもカウリスマキらしい。おまけに偶然巻き込まれた銀行強盗が倒産した経営者で、従業員の給料を払うために押入り自殺する挿話まである。
イスケルマ(フィンランドの歌謡曲)を唄う救世軍の上司(国民的歌手アンニッキ・タハティ)と人気バンド、マルコ・ハーヴィスト&ポウタハルカも作品の雰囲気を醸し出している。
また日本通ぶりを発揮して、日本酒で寿司弁当を食べる食堂車のバックにクレイジー・ケンバンドの「ハワイの夜」が流れるのもご愛嬌。
「人生は前にしか進まない」というキャッチフレーズが全編を通して描かれている。主人公の過去が解ってこれからの人生がどうなるのか、最後まで観客の期待を裏切らない。カウリスマキの本領発揮作品である。
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