J・エドガー
2011年/アメリカ
権力の座に執着した男の孤独
shinakamさん
男性
総合 75点
ストーリー 75点
キャスト 80点
演出 80点
ビジュアル 85点
音楽 85点
老いて益々衰えをみせないクリント・イーストウッドと個性的な人物像に挑戦し続けるレオナルド・ディカプリオのコンビによる、初代FBI長官J・エドガー・フーヴァーの伝記映画。
脚本に「ミルク」のダスティン・ランス・ブラックを据えて、何故50年もの間権力の座に執着したのか?本人が述懐することで物語が進行しながらその人物像にスポットを当てている。
共産主義・労働運動家の過激派テロが横行するなか新しい諜報部門の若きリーダーに抜擢され、以来アメリカの歴史的事件に関わってきたフーヴァー。国会図書館の蔵書をインデックス化した経験を指紋データを集約することに応用し、犯人逮捕を迅速かつ正確化することを成し遂げた。さらにリンドバーグ幼児誘拐事件を機に縦割りの警察組織を超えた連邦犯罪捜査を認めさせるなど功績もあった。
しかしその反面、非公式に政治家・著名人の情報を収集、スキャンダルも含め<公式かつ機密>という爆弾を持つ陰の実力者としての存在のほうが色濃く残った人物であることは否めない。
本作はマザコンで吃音を克服した正義漢溢れる青年が、内面の鬱積に葛藤し正直に生きられなかった私の部分を中心に描かれている。母の死後、彼女の衣装を纏う悲しみの姿は彼の葛藤を象徴的に表わすシークエンスのひとつだろう。
若干詰め込み過ぎの感があり情報量は多いが、アメリカの近代裏面史的な興味を持ってみれば退屈することはない。
フーヴァーの人間性に触れるとき、彼の長年のパートナー副長官・クライド・トルソンとのゲイの噂は避けて通れないが、イーストウッドはさりげなくかつ堂々と2人の関係を描いて見せた。2人のキス・シーンは見たくないものを見てしまった気恥ずかしさも・・・。
フーヴァーに扮したL・ディカプリオは、老け役に不自然さが否めないものの、アメリカの正義を全うするため総てを犠牲にしたひとりの人間としての苦悩は良く出ていた。いきなり求婚されながら仕事に生きることを選び、私設秘書として最後まで仕えたヘレン役にナオミ・ワッツは控えめながら自然に年を取ってゆく女優としては難しい役をうまくこなしていた。母アンナには貫録のジュディ・デンチ。いまどきの息子を溺愛する教育ママぶりがかぶって見えた。
「ソーシャル・ネットワーク」でエリートぶりを魅せたアーミー・ハマーがトルソンを演じているが、さすが晩年の病に倒れたあとの枯れた老人役には無理があった。
イーストウッドは音楽も担当しているが静謐な品を備えた感性には改めて感服させられた。
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