・ リアル感満載の米軍前線兵士を描いたウェルマン監督によるバルジの戦い。
第二次大戦末期、独軍の反撃によるバルジの戦いでの米軍101空挺師団第3小隊をモデルにした群像劇。低予算で良質な作品を作るドア・シャリーがMGM移籍後の初作品で、監督はスピルバーグが敬愛し第一回オスカー作品賞(「ツバメ」)監督であるウィリアム・A・ウェルマン。
パリ入りを目前にしたウォルツ曹長率いる第3小隊はクリスマスを祖国で祝うことを楽しみにしていた。ベルギー・バストーニュ地方の民家に宿営中、戦地へ出動命令が出て舞い戻ってくるハメに・・・。
ドイツ軍と連合国軍の戦車での壮大な戦いで有名ないわゆる<バルジ大作戦>は何度も映画化されているが、僅か5年後に米軍の小隊の視点で描かれた本作は、戦車の戦いはなくフィクションとはいえリアル感満載の隠れた名作だ。
戦況も分からず、何処で戦っているかも知らされず命令のまま戦っている前線兵士の実態を、ときにはユーモアを交え臨場感たっぷりに描いたウェルマン監督。
ウォルツ隊長後退後代わりに指揮を執ったホーリー(ヴァン・ジョンソン)を始め、想像とは違って戸惑う予備兵レイトン(マーシャル・トンプソン)、雪を観て大はしゃぎするロドリゲス(リカルド・モンタルパン)、凍傷で足を引きずりながら奮闘するキニー(ジェームズ・ホイットモア)など、逸話を挟みながら霧の中前進する彼ら。ロバート・ピロッシュの脚本とポール・C・ヴォーゲルのカメラがオスカーを受賞しているだけあって、等身大で兵士の心理状況と戦場の緊迫感が伝わってくる。
ドイツ司令官へ「NUST!」といった実話も出てくるが、ヘルメットで卵焼きを作ろうとして煙りが敵に知れると慌てて消したり、合い言葉が<テキサス・リーガーズ・ヒットとは?>など如何にもアメリカ的だったりする。一方、突然霧の中銃撃戦で「ママ~」と言って死んで行くシーンなど逸話のオンパレードは戦場とはこうだったのでは?と思わせる。
<バストーニュのサンドバッグ野郎>とは彼らへの敬意を込めた愛称だが、霧が晴れ空からの軍用機による大量補給物資が戦史に残り彼らの奮闘ぶりは忘れ去られる運命にあった。
従軍牧師による<この戦争は必要だったか?>という問いには誰も答えなかった。牧師の答えは<自由社会のため必要>だった。<正義のための戦争はない>というのが定説だが・・・・。
戦争を別な切り口で描いた良作だ。