晴れ、ときどき映画三昧

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「炎のランナー」(81・英/米)75点

2020-07-14 12:08:24 | (欧州・アジア他)1980~99 


 ・ 100年前の実話をもとに、二人のランナーを通してオリンピックとは?を改めて想う。


 東京オリンピックの開催が新型コロナの影響で不透明のなか、’24パリ・オリンピックで活躍した二人のランナーを通して当時の英国がどのような時代だったかを描いた人間ドラマ。監督はヒュー・ハドソンで作品・脚本・作曲・衣装デザインのオスカー4部門受賞。

 あまりにも有名なヴァンゲリスによる流麗なテーマ音楽にのって始まるこのドラマは二人の実在人物が中心で、英国ケンブリッジ大学の短距離走者エイブラハム(ベン・クロス)とリデル(イアン・チャールソン)。二人は良きライバルだが、走ることの意義は好対照である。
ユダヤ人のエイブラハムは、排他主義が深く根強い英国において栄光を勝ち取ることで真の英国人であることを認知させる必要があった。
対するリデルはスコットランド人牧師として神のために走るという篤い想いからであり、いずれも<英国の栄誉のため>は副次的なものであった。

 近代オリンピックの精神は参加することに意義があると言われてきたが、100年前から国家高揚のためであったことは間違いない。加えて英国にはアマチュアイズムが建前として根強く、人種の壁も厚いものがあった。 
代表には選ばれたもののリデルに敗れたエイブラハムは、どうしても勝ちたいとイタリア系のプロコーチ、サム・ムサビーニ(イアン・ホルム)に指導を受け学内で批判されるが敢然と拒否、その必死さは並大抵ではなく相当なもの。

 オリンピックの実話をもとにしたドラマというと涙と感動を前面に押し出したストーリーを思い浮かべるが、本作は趣が少し違っていた。
若者たちの友情や進路の悩み・恋愛も描かれるが、むしろオリンピックを通して英国社会の歪みを浮き彫りにした辛口な味付けが印象的。それはエンディングでも表れていた。

 100年後パリで再び開催されるオリンピック。その意義や出場国の多彩さは隔世の感がある。オリンピックにまつわるドラマはこれからも続いて行くことだろう。

 追記:筆者のブログPV数が100万に達しました。つたない映画プレビューを読んで頂き本当にありがとうございました。これからもマイペースで綴って参りますので,機会がございましたら覗いて頂ければ幸いです。