晴れ、ときどき映画三昧

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「群盗荒野を裂く」(66・伊)75点

2020-05-23 12:10:45 | 外国映画 1960~79


 ・ 社会派ダミアーニ監督によるマカロニ・メキシカン。


 「禁じられた恋の島」(62)のダミアーノ・ダミアーニ監督が挑んだ1910年代メキシコを舞台にしたマカロニ・メキシカンもの。政府の武器を強奪して革命軍に売る野盗団の頭と謎のアメリカ人の不思議な生業を描く。ジャン・マリア・ヴォロンテ、ルー・カステルの共演。

 G・M・ヴォロンテといえば「荒野の用心棒」(64)、「夕陽のガンマン」(66)での敵役で有名なイタリアの名優。本作でも粗野な夜盗団の頭エル・チュンチョに扮し、政府の輸送列車を襲い武器を強奪して目的のためには殺人をためらわない。無知で女好きだが革命軍のエリアス将軍を尊敬し、貧しい村の人々のために大地主を追放、村人に軍事訓練したりする情に厚い人物で、単なる悪党とは違っている。
 
 ルー・カステルは「ポケットの中の握り拳」で注目された若手で、本作ではダンディなスーツ姿のアメリカ人・ビルに扮している。酒タバコや女も興味がない目的不明不明の男で、チュンチョから信用され<坊や>と呼ばれ同行する。

 「続・荒野の用心棒」でも流れたエンニオ・モリコーネのテーマ・ソングに乗って、この二人が道中寄り道しながら武器を届けるアクション・ドラマだが、社会派ダミアーニは単なる大活劇には収めず、意外なエンディングを用意していた。

 ビルの正体が判明し、その気になったチュンチョの頭には亡くなった弟や村人たちの姿が蘇ったのかもしれない。少年に「その金でパンを買うんじゃない。ダイナマイトを買え!」といって走り去る姿は反政府に挑もうとする勇ましい革命家に映って見えた。

 のちに「警視の告白」(71)などシリアスなドラマとしてイタリアの巨匠となっていくダミアーニと、「マリオ・リッチの死」(83)、「首相の暗殺」(86)などで名優と呼ばれるヴォロンテのコンビによる本作は、70年代に多く作られた<メキシコ革命もの>のお手本となっている。