・ シェークスピアの舞台劇を映像化したマンキウィッツ監督の歴史劇。
「三人の妻への手紙」(49)「イヴの総て」(50)でオスカー監督・脚本賞を2年連続受賞した名匠ジョセフ・L・マンキウィッツのジュリアス・シーザー暗殺とその後を描いた歴史劇。ブルータスを演じたのはジェームズ・メイソン、アントニーをマーロン・ブランドが演じている。オスカー美術賞(白黒)受賞作品。
「ブルータスお前もか」の台詞で有名なシェークスピアの舞台劇。紀元前44年のローマ、3月15日。シーザーが終身独裁官という位に就こうとして元老院から呼び出しを受け、暗殺されるまでが前半。
後半はブルータスとアントニーの戦いとブルータスの自害までが描かれるが、民衆を前にブルータスが何故シーザーが殺されたかを、そのあとアントニーが本当の罪人はブルータスであると演説するシーンが圧巻。
人望がありシーザーからも信頼され、民衆から人気があったブルータス。共和制擁護派のカシアス(ジョン・ギールウッド)やカスカ(エドモンド・オブライエン)の<シーザーは王位を狙う>という流言に悩ませられる。
彼の愛国心からシーザーを裏切ることへの悩みや自身の名誉欲、さらには民衆への配慮などの葛藤するさまを軸に描かれる。
ブルータスに喝采を送っていた民衆が、シーザーの忠臣アントニー逆転のスピーチによって今度はアントニーに大喝采を送るシーンがハイライト。まるでアントニーが乗り移ったような演技を超越したM・ブランドの追悼演説が総てをさらっていった感がある。
「欲望という名の電車」(51)と「波止場」(54)の間の本作でアントニーに扮したM・ブランド。人気・実力とも絶頂のときで、のちに<20世紀最高の俳優>とも言われている彼が、主演のJ・メイソン、シェークスピア劇の名優J・ギールグッドを圧倒する作品でもあった。
ほかではワンシーンだけだったがブルータスの妻でデポラカーの美しさがモノクロでも際立っていた。
名匠マンキウィッツにしては平凡なできだが、手堅く歴史劇を纏め上げた作品と言えそうだ。