・ ブルゴーニュ地方を舞台に人間模様を描いたドメーヌの物語。
フランスの都会派セドリック・クラピッシュ監督12作目は、ブルゴーニュのワイナリー一家・三兄妹弟を描いたドラマ。原題は「Ce qui nous lie」<私たちを結ぶもの>。
ボルドーと並ぶワインの産地ブルゴーニュ。ドメーヌとはブドウ畑の栽培から醸造・瓶詰めまで一貫して行う生産者のこと。長男ジャン(ピオ・マルマイ)は故郷を飛び出したが、父親が末期症状で10年ぶりに帰ってきた。家業を継いだのは妹のジュリエット(アナ・ジラルド)で、弟ジェレミー(フランソワ・シビル)は別のドメーヌの婿養子になっていた。
多少のギクシャクはあったものの3人は再会を喜ぶが、父の死で相続問題に直面する。ワイン造りの工程を挟みながら長男は離婚問題、長女は醸造家への不安感、次男は義父との関係というそれぞれの悩みを抱えていたことが明らかになる。
筆者はワイン音痴でそれほど醸造過程やウンチクに興味はないが、フランス人にとっては生活文化に大切な位置にあるようだ。グラスを傾けながらその味を豊富な言葉で表現されるのを聴くと、その哲学的でさえあることに驚かされる。
冒頭ジョンの回想でブドウ畑の移りゆく四季が映し出され、物語の進行とともにワインの製造過程が挿入されるシーンはワイン好きでなくても興味深く、ユネスコ世界遺産になっているのも納得。
本作では俳優でもあり、ドメーヌ・ルーロの6代目オーナーのジャン=マルク・ルーロの役割も大きく本物感が漂う。
ときどきユーモアもあるが、大事件は起こらずありふれた日常を描いたベタな家族愛は、ドキュメンタリーの趣もある。
フランス映画には珍しく、爽やかなラスト・シーンまでの1年間を丹念に追った3人の悩みは一旦解決の方向へ進む。ワイン同様、彼らにも熟成を待つ期間が必要なようで、今回出した結論の是非はまだまだ先のことかもしれないが・・・。
自分の悩みを抱えている人が、ワイン片手に観ると解決の糸口が見つかるかもしれない。