晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「輝ける人生」(17・英 )70点

2019-01-18 11:43:20 | 2016~(平成28~)

・ 熟年世代に勇気を与える英国製ハートフル・コメディ。




「ニューヨーク 眺めのいい部屋売ります」(14)のリチャード・ロンクレイン監督が、英国に戻って描いた熟年世代への人生賛歌。ハリポタ・ファンにはお馴染みのイメルダ・スタウンストンとティモシー・スポールが共演し、セリア・イムリー、デヴィッド・ヘイマン、ジョアンナ・ラムレーなど達者な英国ベテラン俳優たちが脇を固めている。

サリー州の豪邸に暮らす専業主婦サンドラ(I・スタウントン)は、35年間支えてきた警察官である夫がナイトの称号を授与されレディと呼ばれる絶頂期にあった。
その記念すべき日に夫と親友の浮気現場に遭遇、怒りのあまり満座の前で罵倒してしまう。

家を出て10年間疎遠だったロンドンのアパートで暮らす姉ビフ(C・イムリー)のところへ居候する。傷心のあまりアルコールに溺れ、中華レストランで暴言を吐き警察沙汰に。

そんなサンドラをビフは慰めようと自分が通うシニア専門のダンス教室へと誘う。 そこには訳アリだが、ダンスを目いっぱい楽しむシニア達がいた。

I・スタウンストンは「ヴェラ・ドレイク」(05)でヴェネチア主演女優賞を獲った名優だが、どちらかというと地味な風貌でシリアスな役や「パレードへようこそ」(15)の<世話好きな地方の主婦のイメージ>があった。いわば英国版・市原悦子だ。

対するS・イムリーが「マリーゴールド・ホテルで会いましょう」(13・16)のような華やかな恋多き都会的な女の雰囲気がある。

役柄を交代したほうがいいのでは?と思うほどミスキャストの感があったが、そこはベテランのふたり。見事に役柄に収まって見えてくる。

特にスタウントンは、気位が高く傲慢な女から途中で可愛い直向きさを垣間見せ、最後はチャーミングな女へ大変身して、熟年女性の共感を独り占めしてしまう。

「ターナー 光と愛を求めて」(15)で主演したT・スポールは「肯定と否定」(16)のようなクセのある役柄がお似合いだが、本作では認知症の妻のため家を売ってボートハウスに住む誠実な夫の役。ドーバー海峡を渡ってクロワッサンを食べに行く夢を持つロマンチストでもある。

こんな3人が見事なアンサンブルで50年代からの様々なダンスミュージックやロンドンやローマのロケ現場とともに物語が進行するうち、原題の「Finding Your Feet」である自立する熟年への応援歌となっている。

脚本にはかなりの無理があるが破綻を吹き飛ばすハートフルなストーリーは、幾つになっても人生はやり直せることを教えてくれる。