晴れ、ときどき映画三昧

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「エール!」(14・仏) 75点

2016-03-19 17:50:59 |  (欧州・アジア他) 2010~15

 ・ ハンディキャッパーを美化したり卑下したりしない仏映画。

                   

 昨年6月、東京有楽町で開催したフランス映画祭のオープニング上映され観客賞を受賞した本作。原題は「ペリエ一家」で、ヴィクトリア・ブドスの原作を「プレイヤー」(12)のエリック・ラルディゴが脚本・監督した<ひとりの少女の成長と自立の物語>。

 酪農経営のペリエ家は、長女のポーラ以外両親と弟が聴覚障害を持っているが、「耳が聴こえないことは個性である」という父のもと、ハンデキャッパーであることを卑下しない暮らしをしている。

 ポーラが通訳の役目を果たし、健常者とのコミニュケーションは不自由していない。高校生になったポーラはコーラス部に入部するが、音楽教師が個人レッスンでその才能を見出しパリの音楽学校への進学を勧められる。

 家族でかけがえのない役割を果たしているポーラ。家族の反対もあってパリでのオーディションをためらうが・・・。

 ポーラは本来中学生ぐらいが相応しい役柄だが、演じたのは映画初出演の歌手で当時16歳のルアンヌ・エメラ。仏オーディション番組「The Voice」で準優勝して監督の目に留まった。

 とても素直な演技は彼女自身がオーディション育ちなので、身近な役柄だったからかもしれない。手話も特訓で見事にこなしている。

 母・ジジ役のカリン・ヴィアールは「しあわせの雨傘」(10)などの著名な女優。父・ロドルス役のコメディアン、フランソワ・ダミアンは台詞(音声)がなく演技力を問われる役柄。

 手話とその仕草で、明るく陽気な美しい母と、猪突猛進だが思い遣りのある父をそれぞれ鮮やかに演じていた。弟のカンタン役のルカ・ジェルベールは聴覚障害者だが、事実を知らなければ一家は本当の家族のようだ。

 ポーラが歌うミシェル・サルドゥのシャンソン「Je Vole」は、本作のハイライト。

 シリアスなテーマなのに、下ネタなどコミカルな逸話を交えながら必要以上に美化することなく、<家族の絆の深さ>が全編に渡って感じられる良作だ。