晴れ、ときどき映画三昧

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「ヴィンセントが教えてくれたこと」(14・米)80点

2016-03-18 12:08:54 | (米国) 2010~15

 ・ ハートウォーミングなB・マーレイのコメディはハリウッドの王道!

                    

 NYブロンクスに住む独居老人のヴィンセント。酒とギャンブルに明け暮れ破産寸前だが、クライスラー ルバロン・コンパーチブルを乗り回している。ロシア人ストリッパー・ダカと懇ろになるなど、エネルギッシュな姿勢は崩そうとしない意地っ張り。

 隣に引っ越してきたシングル・マザーのマギーにも不愛想で毒舌を振りまく。ひ弱な息子・オリバーが学校でイジメられたことがキッカケで、シッターを引き受けたヴィンセント。

 もともとヤル気がないので競馬場やバーなど小学生には相応しくない場所へ連れて行き、馬券やドリンクのオーダー、喧嘩のやり方などを教え込む。

 「ブロークン・フラワーズ」など、偏屈だが何処となく憎めない老人の人生を紐解くと若い頃の人生が垣間見られ、ほろりとするという役柄に定評があるビル・マーレイ。キャリア・ハイの演技で魅了してくれた。

 このハリウッドの王道を行くハートウォーミングなコメディを製作・演出・脚本を担当し映画化したのは、本作がデビュー作のセオドア・メルフィ。予定調和という批判もあるが、破天荒なヴィンセントの人物像がだんだん明らかになっていくというシナリオがなかなかいい。

 撮影が進むにつれて子役嫌いで有名なB・マーレイに気に入られた、オリバー役のジェイデン・リーベラーは当時10歳。その可愛らしさと演技力の確かさで、将来のデカプリオを目指して欲しい逸材だ。

 2人と肩を並べるほど素晴らしい演技で役に成り切ってダカに扮したのがナオミ・ワッツ。決して若くはないロシア人ポール・ダンサーで、妊婦の娼婦という汚れ役なのに明るく前向きに生きている。とてもダイアナ妃を演じたとは思えないはまり役で、オスカーにノミネートすらなかったのが不思議。

 マギー役のメリッサ・マッカーシーやオリバーの教師クリス・オダウド、ヤクザの金貸しテレンス・ハワードなど手堅く抑えた演技で周りを固めているのも好感が持てる。

 介護・貧困・いじめ・人種問題などシニカルなテーマを交えながら、人生はそんなに捨てたもんじゃないという希望を持たせてくれた本作。

 ボブ・ディランの「嵐からの隠れ場所」が効果的に使われているのも、見終わって清々しい気分にさせてくれた。