晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「幸せの教室」(11・米) 60点

2014-10-06 16:41:49 | (米国) 2010~15

 ・ 体験をもとに映画化したT・ハンクス製作・監督・主演作品の学園ドラマ。

                    

 T・ハンクスが自身の体験をもとに長年映画化を企画、「すべてをあなたに」(96)以来の監督・主演したハートフル・ストーリー。気心が知れたジュリア・ロバーツとの共演も見所。

 月間優秀店員賞を9回も受賞しているUマートのベテラン従業員が、学歴を理由に解雇されてしまう。一念発起してイーストバレー・カレッジに入学してキャリアアップを目指す。選んだ科目のひとつ「スピーチ217」の教室で教えることに情熱を失ってしまった教師と出逢う。

 主人公のラリーにはT・ハンクス、教師役がJ・ロバーツというだけで何となくストーリーは予感できるが、期待を裏切らない展開は安心でもあり、物足りないところでもある。2人のオスカー俳優のもっとも得意な役柄を演じながら、それ以上でもそれ以下でもない。

 日本にはない教育制度にコミュニティ・カレッジがあって、高卒なら誰でも自由に入れ2年間の単位取得で卒業できる。人種や世代を超えた環境で繰り広げられるキャンパス・ライフはとても貴重な場ともなっている。

 目的もラリーのようなキャリア・アップを目指す者以外に教養を身につけたい人、大学への足掛かりとするなどさまざま。T・ハンクスが体験したのは高度成長期の70年代だったが、リーマン・ショック以降の現代を反映してシリアスな片鱗も見せながらの学園ドラマに仕立てている。

 主人公は家のローンも返済できなくなって、マイカーを中古スクーターに変えながらもキャンパスライフを謳歌するのに現実感はないが、それを赦してしまうT・ハンクスならではの演技。さらにフリーマーケットで逞しく生計を立てている隣人夫婦や、教室で知り合った若いクラスメート・ダリアとその恋人デルとの交流エピソードが雰囲気を壊さない。また、ヴィンテージ・スクーターの登場は、マニアにとって必見もの。

 美人教師メルセデスは自称作家の夫・ディーンとの不和も相まってアルコール依存状態。夫婦喧嘩のあげく車を降りてバスを待つ彼女の前に現れたラリーは、夫と比較すると、冴えない中年男ではなく一途な若者に映ってみえてくる。スクーターでの2人乗りがキッカケでお互いを意識することに。

 ラブ・コメのオブラートに包まれたこのドラマは、中高年への応援歌でもある。5年前に離婚した失業男にも、公私とも行き詰まって出口が見つからない女性にも、この映画のように幸せな暮らしが待っているかもしれない?