晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

「トイレット」(08・日) 70点

2013-04-23 19:04:52 | 日本映画 2000~09(平成12~21)
・独特の空気感から、家族4人の人間像が浮かんでくる。

 
 「バーバー吉野」(03)、「かもめ食堂」(06)、「めがね」(07)とコンスタントに発表してきた萩上直子念願の北米ロケ・英語版の作品。

他人と関わりたくないオタクの次男レイがアパートの火事に合い、母が死んで兄妹の住む実家へ戻ってくる。そこには母が死ぬ前に呼び寄せた日本人の祖母が同居していた。長男モーリーはパニック障害のため引きこもり状態のピアニスト。妹リサは勝気で生意気な大学生。祖母は「ばーちやん」と呼ばれるが、英語が喋れないせいか無口だ。問題を抱えた4人の生活がエピソードを重ねながら徐々に家族として絆を深めて行く。

萩上監督は実に淡々としたストーリー展開で独特の空気感がある。構図を決めながら余計な説明なしで物語を進めて行く手法は、肌合いが合うか合わないかで評価が分かれるところ。ただ今回は「めがね」では不発だったレトリックの面白さがあって、そこそこ楽しめた。

<トイレが異常に長く、出てくると必ず深いため息をつく>ばーちゃん。なにも喋らず、出前の寿司には箸をつけないが、餃子づくりはとても上手い。古いミシンも器用に使いこなせ、孫たちの頼みは何でも訊いて財布からお金を出してくれる。<センセー>と呼ばれる猫とともに存在感抜群なのだ。

題名からエンディングのオチまでクスリとさせるエピソード満載には洒落たセンスが感じられるが、それ以上のものはない。お馴染みのフード・スタイリスト・飯島奈美、猫、もたいまさこで萩上ワールドに浸り、<オシャレな女性向けグラビア雑誌>を観たような気分。