晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
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『アパートの鍵貸します』 85点

2010-07-15 10:55:36 | 外国映画 1960~79




アパートの鍵貸します


1960年/アメリカ






I Can’t spellワイルダーの最高作





プロフィール画像

shinakamさん


男性






総合★★★★☆
85



ストーリー

★★★★☆
85点




キャスト

★★★★☆
85点




演出

★★★★☆
85点




ビジュアル

★★★★☆
85点




音楽

★★★★☆
80点





ビリー・ワイルダーが製作・監督・脚色したハリウッド最高のロマンティック・コメディ。これをピークに時代が徐々に彼を必要としなくなっていく映画史上貴重な作品でもある。
ストーリーはマンハッタンに暮らす生命保険会社の平サラリーマンC.C.バクスター(通称バド)(ジャック・レモン)とエレベーター嬢フラン(シャーリー・マックレーン)との笑いとペーソスのラブ・ロマンス。
アパートに住む独身のバドが残業する1~2時間を4人の上司に貸すことで出世の糸口にしている。いよいよ人事部長(フレッド・マクレイ)に呼ばれ勇んで27階へ行くとそれは5人目の利用者だった。おまけに浮気相手はバドが片思いしているエレベータ嬢だった。
何よりも計算しつくされたI・A・L・ダイアモンドとの共同脚本が緻密で素晴らしい。お人よしで几帳面な小市民バド、とてもキュートで一途なフランの2人が、だんだん距離が近づきながら抜きさしならない状況になってゆくさまは興味がつきない。人事部長やマリリン・モンロー似の女性をゲットしたジョーをはじめとする4人の上司課長の身勝手ながら憎めない言動。そして隣人ドクター・ドレイファス(ジャック・クラシェン)の設定の上手さ。脇役ひとりひとりがいきいきと描かれている。
そして小道具の使い方の上手さは唸らざるを得ない。とくにフランがアパートで忘れた割れたコンパクト。これでバドの憧れたフランがシェルドレイク人事部長の浮気相手だったと分かる。おまけに部屋を貸したことがキッカケで部長補佐に昇格し個室を与えられたその部屋で。ほかにもテニスラケット、鍵、レコード、カミソリ、シャンペンそしてトランプ。それぞれが何かを語っているような見事な設定である。
テレビでは「駅馬車」や「拳銃無宿」が流れるが、お目当てのグレタ・ガルボの「グランド・ホテル」がCMでなかなか見られないというシーン。映画人ワイルダーの誇りあるカットだ。
フランの「I Can’t spell」という台詞。保険会社に就職できなかった理由だが、<とても言葉では言えない>というバドへのラブ・コールでもある。小粋なエンディングとともに何度見ても新しい発見のある傑作だ。