晴れ、ときどき映画三昧

映画は時代を反映した疑似体験と総合娯楽。
マイペースで備忘録はまだまだ続きます。

『荒野の決闘』 85点

2010-01-20 09:49:34 | 外国映画 1946~59




荒野の決闘


1946年/アメリカ




巨匠ジョン・フォード監督の20世紀FOX最後の西部劇。原題は「いとしのクレメンタイン」で分かるように、伝説的保安官ワイアット・アープが登場する<OK牧場の決闘>のストーリーを古典的メロドラマにアレンジ。詩情豊かな西部劇として好評を博した。
主演は「怒りの葡萄」でコンビを組んだヘンリー・フォンダ。ワイアット・アープは何度も映画化され、それぞれワイアット像を作り上げているが、なかでもジョージ・スタージェス監督「OK牧場の決闘」(’57)でのバート・ランカスターの正義の保安官振りが有名。対してH・フォンダのそれはいかにも西部の純朴な人物像が魅力的でとても好感が持てる。
クレメンタインは東部からドクを追いかけてきたヒロイン。そこに酒場の女チワワが絡むが、ドクは肺を患っていてクレメンタインを追い返そうとする。ワイアットはクレメンタインに一目惚れするが勿論片想い。整髪して香水まで付け、クレメンタインとダンスするシーンはほほ笑ましく弟を殺され牛を盗まれたクラントン親子との対決を思わず忘れてしまうほど。
壮絶な銃撃戦を期待した本格的西部劇ファンや後のマカロニ・ウェスタンファンには物足りなさを感じたかもしれない。とはいえ決闘シーンでの抑えた演出ぶりは、親友ドク・ホリデイ(ヴィクター・マチュア)の最後に相応しく、ダイナミックさと繊細さを併せ持った作りとなった。
クロサワが憧れたJ・フォードらしく馬の疾走する迫力やモニュメント・バレーで撮影された岩山の風景は、モノクロならではの空と雲のコントラストで映画史に残る名シーンである。
映画の完成にはプロデューサーのダリル・F・ザナックの意向がかなり反映されたとか?盛りだくさんの97分だった。