ミルク
2008年/アメリカ
偏見をバネに生き抜いたヒーロー
総合 80点
ストーリー 80点
キャスト 85点
演出 80点
ビジュアル 80点
音楽 80点
公職者で同性愛者であることを公表したサンフランシスコ市議、ハーヴェイ・ミルクの半生を描いたドキュメント風のヒューマン・ドラマ。ガス・ヴァンサント監督久々のメジャー作である。H・ミルクはアメリカでは「タイム誌が選ぶ20世紀英雄の100人」に選ばれるほど有名だが、日本ではそれ程知られていない。実在の政治家・運動家の映画化が近年多い中、彼を取り上げたのはR・エプスタインのドキュメンタリー「ハーヴェイ・ミルク」(’84)以外は見当たらない。「全てのマイノリティに対して差別や偏見を解消することで、生きる希望を与えようとした活動」が死後30年にして、ショーン・ペン主演で映画化され高評価を得たのは時代が要求していたのかもしれない。
G・バンサントはドキュメンタリー・フィルムを交えながら、ゲイであることをカムアウトした40歳から48歳で死ぬまでの8年間に焦点を絞って、巧く128分に纏めている。
「ブロークバック・マウンテン」以来同性愛をテーマにした映画に対しての偏見はめっきり減ったというものの、男同士のラブ・シーンは、ストレートの自分としてはやっぱり違和感なくして見るには抵抗があった。リベラルな演技派S・ペンならではのオスカー獲得である。
ミルクを取り巻くキャスティングが色とりどり。NY時代以来の恋人スコット・スミスにジェームズ・フランコ、若き運動家クリヴ・ジョーンズにエミール・ハーシュ、同僚市政執行委員のダン・ホワイトにジョシュ・ブローリンと最近話題の映画に出演した若手・中堅どころがそれぞれ見せ場を作って、彼のひととなりを際立たせてくれる。このあたりは、オスカー受賞の若手脚本家、ダスティン・ランス・ブラックによるテンポの良さが要因となっている。
カリフォルニア州では州憲法で同性結婚が認められているが、昨年11月その法案を改正する案が可決され、問題が再燃しているという。果たしてこの映画は解決策の糸口となるのだろうか?