ダウト-あるカトリック学校で-
2008年/アメリカ
悪意がないと疑惑は生まれない?
総合 80点
ストーリー 80点
キャスト 90点
演出 85点
ビジュアル 80点
音楽 80点
「月の輝く夜に」の脚本家ジョン・パトリック・シャンリが自身の戯曲をもとに監督・脚本を手掛けた’64NYブルックリンのカトリック教会学校で起きた心理サスペンス・ドラマ。
伝統を守る厳格な校長シスター・アロイシス(メリル・ストリープ)と、リベラルで生徒にも人気があるフリン神父(フィリップ・シーモア・ホフマン)が、唯一の黒人生徒ドナルド・ミラーを巡っての緊迫感溢れるバトルがハイライト。2人のオスカー俳優の舌戦はトニー賞受賞の舞台劇さながら15分あまり続くが、その前哨が静かなだけに嵐のような激しさでこのサスペンスを盛り上げてくれる。
キッカケを作ってしまった新米教師のシスター・ジェイムズ(エイミー・アダムス)は、2人の狭間でオロオロする。その疑惑とは神父と生徒の不適切な関係。もっともこの2人は教育方針・食事・嗜好品など何から何まで正反対で、そのどちらにも部分部分で共感してしまう若い教師には手に負えない。
M・ストリープは殆ど完璧な役作りで、神をも恐れぬ確信を持った言動で観客を魅了する。
対するP・S・ホフマンは如何にも裏に何かを隠していそうで疑惑を持たれそうな風貌で、分が悪そう。しかし確証は何もない。
ここで生徒の母親・ミラー夫人(ヴィオラ・デイヴィス)が登場し、意外な事実を告げることで形成は逆転する。
4人とも逃してしまったが、オスカー候補となっただけあってこのアンサンブルは見事と言っていい。とくに出番は少ないものの、偏見を持たれながらも息子を愛する毅然たる母親役のV・デイヴィスの演技は最も印象に残る。助演女優賞を獲って欲しかった。
この映画は真相を明かすことがテーマではなく、「疑惑と確信の狭間で揺れる人間模様」を巧みについて、誰でもこのような経験があるのでは?と問いかけてくる。国家でも人間でも疑惑は悪意がないと生まれない?争いがナカナカ無くならない理由もそこにある。