ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 豊下楢彦・古関彰一著  「集団的自衛権と安全保障」(岩波新書)

2015年07月15日 | 書評
集団的自衛権の憲法解釈変更の閣議決定は日本の安全につながるのか 第17回

第3部 日本の果たすべき国際的役割 (第1章、第2章 豊下楢彦   第3章、第4章 古関彰一)
第3章 今憲法を改正する意味


 憲法は人権擁護であり、安保条約は軍事同盟である。「万機公論に決すべし」の明治維新以来憲法は世界に開かれた窓であった。今憲法を考えるとすれば、どのような国の開き方をするのかということであるが、国際社会と地方自治の問題に集約されるだろう。自民党の憲法改正草案の、軍事力の強化、人権の制限、天皇制復権の3点セットはあまりに閉ざされた国家像である。明治憲法に戻そうとする時代感覚ゼロの国家像である。安倍首相の「積極的平和主義」と言った無内容なご選択を止め、平和のうちに生存する権利や外国人の人権を取り入れた開かれた国にするべきであろう。東京1極主義という首都圏収奪体制(財源を首都圏に集中する)の下では、2040年には半数の地方自治体は消滅すると増田元総務大臣は述べている。自民党の憲法改正草案は地方自治に何ら改正点はない。そのまま放置すれば地方は壊滅するというのに。明治憲法の下で「富国強兵策」が押し進められ、太平洋戦争に突入した。現在日本のGDP は世界第3位、軍事費は世界第6位となり文字通り「富国強兵」は実現されている。しかし人権は世界での底辺を歩んでいる。国連は1993年国内人権機関の設置を決める決議を出したが、日本は未だに設置を決めていない。女性の就業率は先進国中第20位、裁判の法律扶助費は最低レベル、GNPに占める教育費はOECDの最下位、外国人の参政権は否認したままで、世界に冠たろうとする姿は傲慢である。

(続く)