ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 豊下楢彦・古関彰一著  「集団的自衛権と安全保障」(岩波新書)

2015年07月14日 | 書評
集団的自衛権の憲法解釈変更の閣議決定は日本の安全につながるのか 第16回

第3部 日本の果たすべき国際的役割 (第1章、第2章 豊下楢彦   第3章、第4章 古関彰一)
第2章 国際社会のルール化とは


 米国は超大国(覇権国家)として国際紛争を武力で解決する世界の憲兵たる地位を自認している。誰にも縛られず、国連さえ無視して単独行動をとれる国として、世界は事実上アメリカを「例外国」として許容してきた。しかしイラク戦争を機に今や中国が新たな超大国として台頭してきた。国際社会はこの中国を普遍的なルールの枠内に組み込んでおかなければならないが、アメリカの例外主義は説得性を失いつつある。アメリカは手を縛られたくないために数々の国際条約から離脱している。海洋、宇宙、環境などの分野である。米国がこれまで享受してきた「例外」則に固執し続けるなら、中国への説得力に欠け、中国の拡張主義に歯止めがかからない。アメリカも普遍的なルールの下に入るべきである。2014年1月防衛省防衛研究所は「中国安全保障レポート2013」を刊行した。中国における危機管理の仕方を米中関係の中で分析したものである。中国の危機管理とは①原則性と柔軟性、②正統性と主導性の追求、③総合性と政治の優位に特徴があるという。中国共産党は朝鮮戦争以来さまざまな危機に遭遇してきた。防衛省報告の結論は中国との間で危機管理を行うことは可能であるという。日中間で多層的な危機管理メカニズムの構築が不可欠であるとする。アジアでの中国のパワープレゼンスは圧倒的であるが、国際世論を無視することできないので、そこで国際的な枠踏みにっ中国を入れてゆくことが最重要である。日本の憲法は国際公共財として価値の高いものであるという認識があったが、近年兵器輸出3原則が撤廃され、日本も兵器輸出国になろうとしていることは極めて遺憾である。また2008年に宇宙基本法が成立し、1969年に採択された宇宙の軍事利用を禁止する国会決議が反故にされた。武器輸出3原則、宇宙の平和利用、電子力の平和利用原則、非核3原則そして集団的自衛権を禁止する憲法9条、専守防衛原則などの平和諸原則こそ世界の宝物である。

(つづく)