ブログ 「ごまめの歯軋り」

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読書ノート 豊下楢彦・古関彰一著  「集団的自衛権と安全保障」(岩波新書)

2015年07月13日 | 書評
集団的自衛権の憲法解釈変更の閣議決定は日本の安全につながるのか 第15回

第3部 日本の果たすべき国際的役割 (第1章、第2章 豊下楢彦   第3章、第4章 古関彰一)
第1章 積極的軍事主義


 安倍首相が提唱する「積極的平和主義」とは具体的には「積極的軍事主義」をめざすものであり、知れを象徴的に示すのが、武器輸出禁止3原則の撤廃である。1967年佐藤栄作首相が、共産圏、国連決議で禁止された国、国際紛争の当事国またはその恐れがある国の3つのカテゴリーの国への武器輸出を禁止した。1976年三木首相は実質的にすべての国への武器輸出を認めないことになった。それ以来自民党内閣の国是として守られてきたが、野田内閣が我国と安全保障面で協力関係にある国と共同開発した場合については輸出を認めるという原則緩和に踏み切った。ところが2014年4月安倍内閣は過去半世紀間守られてきた武器輸出3原則を撤廃し「防衛装備移転3原則」なるものを策定した。「武器を輸出して平和を促進しよう」というもので、「積極的平和主義」とおなじ武力で平和を勝ち取るという言葉の綾というより、転倒した論理を平気で使う支離滅裂さである。美しい日本がイコール戦前レジームである論理もそうである。言葉の魔術師というより、言葉の矛盾を無視して収まる脳の構造を見てみたい。武器移転が禁じられる新たな3原則とは、①条約や国際約束の義務に違反する国、②国連安保理決議に基づく義務に違反する国、③紛争当事国である。禁止対象国の定義が曖昧になって、解釈次第で裁量できる。それは国内企業が部品を供給するステルス戦闘機F35の米国政府の一元管理での輸出を可能とするための措置であった。つまりイスラエルにF35を輸出できるようにしたがための屁理屈に過ぎなかった。欧米の兵器産業の最大のお得意先は紛争国や独裁者の国であった。湾岸戦争ヲ引き起こしたイランのフセインは実はイラン戦争でアメリカに養われた独裁者である。これを「イラク・ゲート」と呼ぶ。米国がフセインに多額の債務保証を付け軍事独裁政権に育て上げたのである。イラクは格好の兵器市場となりフセインはモンスターに変身した。中国の強大化を背景として、インド、韓国、ベトナム、マレーシア、シンガポールなどのアジア諸国で軍備増強が進んでいる。そこに日本の兵器産業(三菱Gを中心とする重工業企業)が目を付けたのであろうが、日本の兵器輸出国家への道は、安全保障のジレンマを一層深刻なものとし、アジアの軍備拡張に火をつけかねない。安倍政権が狙うものは米国の「統合エアー・シー・バトル構想」に一体化したいのである。衛星攻撃ミサイル、無人機攻撃機、ロボット兵器、サイバー戦争などの全次元戦争への参加である。

(つづく)