アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

コロナ陽性の米兵はなぜ隔離されず沖縄へ行けたのか

2021年11月20日 | 日米安保・軍事同盟と政治・社会

     

 韓国や欧米ではコロナ感染の新たな波が押し寄せ、空港での水際対策の重要性が改めてクローズアップされています。そんな中、在沖米海兵隊員が成田空港の検疫で陽性であったにもかかわらず、隔離されず、民間機で沖縄に向かっていたことが発覚しました。

 この米兵(20代の男性、キャンプシュワブ所属)は、10月30日に米国から成田空港(写真右)に到着。PCR検査で陽性が判明しましたが、翌31日に民間機で成田から沖縄へ移動しました(写真中は沖縄の米軍普天間基地)。翌11月1日米軍から沖縄県への連絡で事実が判明しました。

 米兵はなぜ隔離されなかったのでしょうか。

 民間人が入国時に陽性が判明した場合は、検疫所が確保した車両で移動し、借り上げたホテルなどで治るまで隔離されます。
 ところが、「米軍関係者の場合は、米軍の提供区・施設内で療養することになる。隔離場所に移送する時点から米軍管理に置かれる」(17日付琉球新報)のです。

 この米兵は成田空港の検疫所で、「「(米軍)横田基地所属」と申告した」(16日付沖縄タイムス)ため、その時点で米軍の管理下に入りました。

 しかし米兵は横田基地(写真左)へ移送されることなく、翌日、民間機で沖縄に移動しました。機内では米兵の近くに27人の乗客が同乗していたといいます。
 米兵はなぜ横田基地へ行かず、沖縄へ向かうことができたのでしょうか。

 日本政府は、「引き続き調査中と聞いている」(松野博一官房長官、16日の記者会見)と、米軍に丸投げで、自ら経過を明らかにしようとする姿勢すら見せていません。

 問題は、そもそも米兵・米軍関係者は入国時に日本の検疫の対象にならず、また今回のように民間人に交じって検疫を受けても米軍関係者と申告すればその時点で日本の管理下から外れる仕組み自体にあります。それは日米地位協定があるからです。

 地位協定第9(軍隊構成員などの出入国)第2項はこう明記しています。
合衆国軍隊の構成員は、旅券および査証に関する日本国の法令の適用から除外される。

 地位協定による米軍の特権は、17(刑事裁判権)、で米兵には日本の刑事司法が及ばないことが事件のたびに問題になりますが、地位協定の治外法権はそれだけではないことが、今回の陽性米兵の隔離破りで露呈したと言えます。

 問題はこの米兵だけではすみません。当然、「隔離措置を経ないまま日本国内を移動する米軍関係者が他にもいないかなどの疑念は残り」(17日付琉球新報)ます。

 そもそも地位協定第5(受け入れ国内における移動の自由、公の船舶・航空機の出入国、基地への出入権)によって、米軍関係者(家族を含む)が米政府や米軍の船舶・航空機を使えば日本のチェックを受けず、自由に出入国でき、米軍基地間を移動することができます。日本の防疫の対象外になるのです。

 こうした治外法権の日米地位協定は、抜本的に改定しなければなりません。コロナ対策の面からもそれは喫緊の課題です。

 そして改めて確認する必要があるのは、地位協定の前文が、「日米安保条約第六条の規定にしたがい…締結した」と明記していることです。
 日米安保条約第6は、「アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍および海軍が日本国において基地を使用することを許される」とする条文です。地位協定の治外法権の元凶はこの日米安保の条文です。

 地位協定の抜本改定を、元凶である日米安保条約の廃棄へつなげていくことがきわめて重要です。

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