アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「クリスマス停戦」・「ロシアの言葉は虚偽」は事実か

2023年01月10日 | 国家と戦争
   

 ロシアのプーチン大統領が提唱した「クリスマス停戦」(モスクワ時間6日正午、日本時間同午後6時から36時間)をめぐる経過は、ウクライナ情勢を判断する上で重要です。

 「停戦」は、プーチン大統領が「ロシア正教会最高位のキリル総主教の提案を受ける形で5日…一方的に命令」(9日付沖縄タイムス=共同)したものです。

 しかし、「「停戦中」も双方戦闘」(8日付琉球新報見出し)という状況が続きました。

 この状況に対し、ゼレンスキー大統領は7日のビデオ演説で、「世界は今日、モスクワからのあらゆるレベルの言葉が、いかに虚偽であるかを改めて確認できた」と「ロシア側を非難」しました(8日付朝日新聞デジタル)(写真右)。

 結局、「期間中も交戦が各地で続き、停戦は実態を伴わなかった」(9日付沖縄タイムス=共同)のです。沖縄タイムスは<一方的停戦期間が終了 ロ「ミサイルで600人殺害」>の見出しを付けました。

 以上が概略です。

 「停戦」はウクライナ側との協議で決められたものではありませんでしたから、「プーチン大統領が…一方的に命令」は事実です(他の場合の「ロシアが一方的に…」は多分にプロパガンダですが)。

 しかし、ゼレンスキー氏の「モスクワからのあらゆるレベルの言葉」は「虚偽である」という主張は正当でしょうか。

 ゼレンスキー氏のこの言葉や上記の沖縄タイムスの見出しなどで印象付けられるのは、ロシアは自分で一方的に「停戦」を口にしながら攻撃をし続けた全くのウソつきだ、ということです。

 それは事実ではないと言わねばなりません。

 「停戦期間中」もロシアからの砲撃で多数の被害・犠牲が出たのは確かでしょう。しかし、「ロシア国防省はウクライナ軍が砲撃を続けたと主張…ロシア側はウクライナの攻撃があった場合には反撃するとしており、実態を伴う停戦状態には至っていない」(8日付琉球新報=共同)(写真中)。すなわち、「攻撃」を続けたのはウクライナ側であり、ロシアはそれに「反撃」した、というのが事の経過です。

 そもそも、「プーチン大統領が5日、一方的に停戦を宣言し、ウクライナ側にも同様の対応を求めた。これに対し、ウクライナ側は、戦争を終わらせるにはロシアが侵略そのものをやめなければならないとして、停戦を受け入れていなかった」(8日付朝日新聞デジタル)のです(写真左は「停戦」を受け入れないとしたゼレンスキー氏のビデオ演説)。

 プーチン氏が命令した「一方的な停戦」が真の停戦に繋がるものだったとは思いません。いくらウクライナ側の「攻撃」に対する「反撃」であっても、人を殺傷する砲撃を肯定することは到底できません。この問題に限らず、ロシア側を擁護するつもりは毛頭ありません。

 また、ゼレンスキー氏が「停戦を受け入れなかった」ことも、戦略上の判断としてはありうることかと思い、ここではその是非は問いません。

 ここで言いたいのは(言わねばならないのは)、「モスクワからのあらゆるレベルの言葉」は「虚偽である」というゼレンスキー氏の主張は事実に反し、正当ではないということです。

 ロシアは少なくとも「36時間の停戦」は言明通り実行しようとしました(ロシア正教の総主教の提案だったこともあるでしょう)。しかし、ウクライナ側が「停戦」を受け入れず、「攻撃」を続けたのでロシアは「反撃」したのです。

 ゼレンスキー氏が7日のビデオ演説でも、「われわれはそもそも一方的な停戦には応じなと言明した。したがって攻撃を続けた」と言ったのなら、一貫しています。しかし、上記の発言は、ロシアはウソつきでありプーチンは悪魔であるという印象付けを図るプロパガンダ以外のなにものでもありません。

 そして、そのゼレンスキー氏の発言を無批判に報じ、上記のような見出しを付けて報じる日本のメディアは、ゼレンスキー氏のプロパガンダに加担していると言わざるをえません。

「停戦」をめぐるこの経過と報道は、「ウクライナ戦争」全体を象徴しているのではないでしょうか。

 プロパガンダは、ロシア側、ウクライナ側を問わず、情勢判断を狂わせ、真の停戦・和平に逆行します。そして、「ウクライナ戦争」を口実にした岸田政権・自民党の大軍拡・軍事国家体制づくりを助長するものに他なりません。
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