アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

日米軍事同盟の「打って出る同盟」化とG7

2023年01月12日 | 日米安保体制と平和・民主主義

    

 岸田首相は「G7各国訪問」の締めくくりに13日(日本時間)、就任後初めてワシントンを訪れ、バイデン大統領と会談します。バイデン氏に招かれた、といえば聞こえはいいですが、来いと呼ばれたのです。

 なぜバイデン氏は岸田氏を呼びつけたのか。バイデン氏と親しいエマニエル駐日大使が、10日のNHK国際報道2023の単独インタビューでその背景をあけすけに語りました(写真は同番組から)。

 エマニエル氏は岸田政権が12月16日に閣議決定した「軍拡(安保)3文書」について、画期的だと評価しその理由をこう述べました。

「それは戦略文書を更新しただけでなく、そのための予算をつけたからだ。政治的に大変勇気が必要なことで、歓迎している。「これが私たちの目標だ」というのと「これが目標を実現させるための予算だ」というのは全く別だ。岸田首相が予算まで実行したことで、大統領は早々に総理をホワイトハウスに招きたいと考えた

 バイデン氏が岸田氏を招いたのは、5年間の軍事費を現行計画1・5倍の43兆円とする予算決定したことを“褒めてやる”ためだというのです。

 それだけではありません。エマニエル氏は日米安保条約による日米軍事同盟が新たな段階を迎えていると強調しました。
 それは、「Alliance Protection」から「Alliance Projection」への深化です。NHKはこれを「守りの同盟」から「打って出る同盟」へと訳しました。

 「打って出る」とはどういう意味か。エマニエル氏はこう述べました。

東南アジアやインド太平洋地域の国々の心をつかみ利益を得るため、日米は二国間のみならず、この地域に働きかけることにした。その典型的な例が、3月に国連で行われたウクライナに侵攻したロシアを非難する投票だ。ASEAN10カ国のうち8カ国がロシアを非難した。これは日本の外交の働きかけによる成果だ。そしてそれは、日米の利益だった」

 バイデン政権は、「アメリカ軍だけでなく外交や経済力、同盟国など関係国の力を活用して抑止力を築く」統合抑止力(Integrated Deterrence)戦略を決定していますが、NHKは日米同盟の「打って出る同盟」化はその一環だと解説しました。

 岸田政権が閣議決定した「軍拡3文書」は、アメリカの「統合抑止力戦略」の一環である日米軍事同盟の「打って出る同盟」化を実行するものにほかなりません。
「3文書」について、「米国家安全保障会議(NSC)幹部は「日米同盟だけでなく、より広い地域への関与を新たにするものだ」と評価する」(9日付中国新聞)のはそのためです。

 5月に広島で行われるG7サミットは、このバイデン政権の「統合抑止力戦略」を具体化する舞台であり、岸田首相はその「成功」のために奔走しているのです。

「首相がG7 議長としての各国との腹合わせ以上に「貴重な場」と位置付けるのは、バイデン米大統領との首脳会談だ。会談では、抑止力強化に向けた戦略が主題となる」(9日付中国新聞)

 G7サミットは常にアメリカの戦略に沿ったものですが、5月の広島サミットはとりわけ、バイデン政権の「統合抑止力戦略」、それに基づいた岸田政権の「軍拡3文書」の実行へ向けたきわめて重大な政治・軍事戦略に基づくものとなります。
 日本の大軍拡・軍事国家体制づくりを阻止するために、G7広島サミットの危険な狙いを徹底的に批判することが必要です。

 にもかかわらず、日本のメディアを挙げて、そして広島では市民を巻き込んで、「G7成功」のキャンペーンが展開されています。きわめて危険な事態です。
この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 「クリスマス停戦」・「ロシ... | トップ | バイデン大統領の機密文書隠... »