アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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自衛隊・安保条約を擁護する共同通信の偏向世論調査

2024年08月05日 | メディアと日本の政治・社会
  

 地方紙各紙は4日、自衛隊に関する共同通信(日本世論調査会)の世論調査結果を掲載しました。各紙は「専守防衛「厳守を」68%」などの見出しで大きく報じました(琉球新報は1面トップ)。

 この調査は設問・選択肢がきわめて不適切で、自衛隊、日米安保条約容認へ世論を誘導するものになっています。特に問題なのは次の2項目です。

<問4 自衛隊は1954年7月1日に創設され、今年で70年です。日本は第2次世界大戦で敗戦国となったため、軍隊は廃止され、その後、自衛隊ができました。あなたは今後、自衛隊はどうあるべきだと思いますか。

 憲法の平和主義の原則を踏まえ「専守防衛」を厳守すべきだ     68%
 憲法9条を改正して「軍」として明記すべきだ            20
 憲法違反なので、戦力を放棄し、災害派遣に特化した組織にするべきだ 9
 憲法違反なので、自衛隊は解体するべきだ              0
 その他                              2
 無回答                              1   >

 この設問・選択肢の問題点は、①「専守防衛」論が「憲法の平和主義原則」に則ったものだという誤った前提に立っていること②自衛隊が軍隊であることを曖昧にしていること③軍事と災害派遣を混同していることです。

 「専守防衛」論は歴代自民党政権が自衛隊発足以来、その違憲性を隠ぺいするため唱えている方便です。「専守防衛」の名の下に自衛隊を増強し続け、米軍との一体化を強めてきている事実を想起する必要があります。

 「平和勢力」といわれる人々や団体・政党の中にも「安保法制」(2015年)によって自衛隊が違憲の存在になったとする議論がありますが、それは誤りです。自衛隊は発足以来、憲法の前文、9条に違反する違憲の軍隊です。

 軍隊である以上「戦力を放棄し、災害派遣に特化した自衛隊」などありえません。軍事と災害派遣の混同は他の設問・選択肢の「戦争や災害派遣などで国や被災者を守る」という記述にも表れています。

 選択すべきは、「憲法違反の自衛隊は解体し、災害派遣に特化した別の組織を新たに創設すべき」です。その選択肢を欠落させている調査はきわめて不当です。

<問7 日本は戦後、米国と日米安保条約を結び、同盟関係を築いてきました。あなたは、日米の同盟関係をどう思いますか。

 今よりも同盟関係を強化するべきだ         30%
 今の同盟関係のままでよい             60
 今より同盟関係を弱めるべきだ           7
 同盟関係を解消するべきだ             2
 無回答                      1    >

 この設問・選択肢の問題点は、「日米同盟」が軍事同盟であることをあいまいにしている(伏せている)ことです。同盟といえば軍事同盟のことですが、一般的には「仲良くする関係」という素朴な捉え方も少なくないでしょう。

 日米同盟は日米安保条約に基づくものです。その前文には、「両国が集団的自衛の固有の権利を有していることを確認」と明記し、米国との集団的自衛権(共同軍事行動)を規定しています。在日米軍の存在、自衛隊増強も安保条約に基づくものであることを銘記する必要があります。

 共同通信の設問・選択肢はこうした軍事同盟の本質を示さないまま、アメリカとの関係を問うもので、素朴に友好関係を望む世論を軍事同盟=日米安保条約支持に誘導する偏向調査と言わざるをえません。

 憲法学者の木村草太氏が「世論調査の…「日米同盟の強化」が何を意味するか、具体的にイメージされていないように思う。…安全保障の選択肢の意味を厳しく、具体的に考えるべきだ」(4日付琉球新報)と指摘しているのは正当です。

 世論調査はそもそも恣意的要素が強いものですが、今回の共同通信の調査のように、きわめて不適切な設問・選択肢によって調査し、その結果を大きく報じることで「世論」を憲法違反の自衛隊・日米安保条約容認へ誘導することは許されるものではありません。
 政府(国家権力)と一体となって軍拡・戦争国家化を推進するメディアの責任が厳しく問われます。
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