アリの一言 

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「日報隠ぺい」と「陸上総隊」発足ー違憲の自衛隊は解散を

2018年04月05日 | 自衛隊・日米安保

     

 陸上自衛隊のウソにウソを重ねた「日報」(イラク派遣)隠ぺいが発覚した4日、陸自創設以来の大組織改編であり「新軍部」創設ともいわれる「陸上総隊」の発足式典(写真左)が行われました。なんという皮肉・巡り合わせでしょうか。

  陸上総隊の初代司令官となった小林茂陸将は4日の会見で、「シビリアンコントロール」を強調しました(写真右)が、その直後、小野寺防衛相は、陸自制服組が昨年3月に「日報」を確認しておきながら稲田防衛相(当時)に報告していなかったことを明らかにしました(写真中)。「シビリアンコントロール(文民統制)」など絵空事であることが誰の目にも明白です。

  これはたんに「シビリアンコントロールが赤信号」(辻元清美立民党国対委員長)だという話ではありません。自衛隊という軍隊そのものの根本にかかわる問題です。
 なぜなら、「軍事機密」の隠ぺいは軍隊の属性であり、そもそも「シビリアンコントロール」とは憲法違反の自衛隊を保持するための方便にすぎないからです。

 自衛隊は「戦力不保持」を明記した憲法9条に明白に違反する違憲の軍隊です。憲法と自衛隊は共存できません。それは自衛隊の側からも認めていました。

 「警察予備隊(1951年8月発足の自衛隊の前身―引用者)時代の(入隊時の―同)宣誓書には、『私は、日本国憲法及び法律を忠実に擁護』するとあり、保安隊(1952年10月発足―同)にも、『私は、日本国憲法を擁護し、法律を遵守』するといった文面があった。しかし、自衛隊創設(1954年7月―同)の折に、『憲法擁護』の文字が削除された経緯がある」(纐纈厚山口大名誉教授、『侵略戦争―歴史事実と歴史認識』1999年ちくま新書)

 なぜ自衛隊の「宣誓書」から「憲法擁護」が削除されたのか。

 「戦後の再軍備は憲法の改悪を先取りする形で強行された。それで自衛隊創設当時、軍事や軍隊の存在を全く想定していない現行憲法に忠誠を誓うことは非合理的であるとの判断が自衛隊周辺に存在し、その結果が『憲法擁護』の削除になったと思われる自衛隊側からすれば、軍隊組織の保有を認めた新憲法の登場を待って憲法への忠誠をなそうと判断したに相違ない」(纐纈氏、同前)

 「宣誓書」問題は国会でも追及され(1973年9月19日の参院内閣委員会)、形式的には「日本国憲法」の文字は戻りました。しかし、纐纈氏は「自衛官には憲法遵守の精神や思想が隊内教育として徹底されているとは言い難い」と言います。

 纐纈氏のこの指摘は19年前のものですが、安倍首相が9条に「自衛隊」(軍隊組織の保有)を明記する改憲に躍起になっている今の状況を予見していたものと言えるでしょう。

 憲法が禁止している自衛隊が「憲法擁護」するのは矛盾、だから憲法を変えて自衛隊を「合憲」にしてくれ。それが制服組(軍人)の自衛隊発足以来の願望です。安倍首相はその声に応えて憲法を変えようとしているのです。

 方向がまるで逆です。「立憲主義」に立てば、違憲の自衛隊に合わせて憲法を変えるのではなく、憲法に合わせて違憲の自衛隊を解散させるべきであることは言うまでもありません。 

 違憲の軍隊、しかもアメリカがつくった警察予備隊の当時から対米従属の軍隊である自衛隊は解散しなければなりません。それは東アジアの平和にとっても急務です。災害対策には救助に特化した組織(レスキュー隊)を新設すべきです。
 それが今回の「日報隠ぺい」事件からくむべき最大の教訓ではないでしょうか。

 少なくとも、「陸上総隊」は直ちに解散すべきです。今まで、海自には「自衛艦隊」、空自には「航空総隊」がありながら陸自には5つの方面隊を統括する総隊がなかったのは、戦前の教訓から、「権限の集中を懸念していた」(中村龍平元統幕議長の発言、4日のNHKニュース)から、すなわち”陸軍の暴走“の恐れがあったからなのですから。  



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