アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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沖縄・屋良朝博氏の危険な「解決策」

2019年04月23日 | 沖縄と日米安保・米軍・自衛隊

     

 21日の衆院沖縄3区補選で当選した屋良朝博氏(「オール沖縄」陣営)は記者会見で、「普天間問題の具体的な解決策は?」と聞かれ、「海兵隊がどのような状況にあるかを踏まえ解決策を出していく」(22日付琉球新報)、「具体的な解決策を早急に作る」(22日付沖縄タイムス)と述べました。

 屋良氏の「具体的な解決策」とはどのようなものか、近く明らかにされるようですが、実はすでに5年前、屋良氏はある論考でその「解決策」なるものを示しています。
 新外交イニシアティブ(猿田佐世事務局長)編の『虚像の抑止力』(旬報社、2014年)に収められている「海兵隊沖縄駐留と安全保障神話―沖縄基地問題の解決に向けて」です。屋良氏が「フリーラーター」として書いている分には1つの考え方ですみますが、いまや衆院議員となり、しかも「オール沖縄」陣営から国会議員になった以上、読み飛ばすわけにはいきません。

 改めて読み直してみると、それは「沖縄基地問題の解決」とはほど遠いばかりか、逆に多くの新たな問題を発生させるきわめて危険なものです(以下、引用はすべて同論考より。太字は引用者)。

 屋良氏の「解決策」の基本的特徴は、「知恵を出せば海兵隊も沖縄も得をするウィンウィンの解決はある」(39㌻)、すなわち海兵隊の利益に配慮していることです。屋良氏は米海兵隊の日本・アジアにおける存在を否定するどころか、海兵隊の「役割」を次のようなたとえで積極的に評価しています。

 「警察官が地域をパトロールすることで犯罪は抑止されている。地域の治安を維持すれば、結果としてみんな枕を高くしていられる。アジアの中で米海兵隊がその役割を果たしている」(51㌻)

 その基本スタンスから海兵隊の運用・任務を”分析“したうえで、屋良氏は結論的に「三点の具体的な提案」を行っています。

  「こうしたファクトを踏まえた本稿の提案は①沖縄から撤退する海兵隊に対して(日本が負担している―引用者)施設整備費を海外でも適用する、②高速輸送船を提供し、海兵隊の輸送力向上を支援する、③日米ジョイントMEU(海兵遠征隊―引用者)で日本もアジア安保ネットワークに貢献することの三点だ。これにより沖縄基地がなくても海兵隊は従来の運用を継続できる」(75㌻)

 そして、この「提案」の「最大の意義」を屋良氏はこう強調します。
 「海兵隊の沖縄撤退による抜本的な解決を目指すことの最大の意義は、日米同盟を今日的なあり方にオーバーホールすることにある。その中で日米ジョイントMEUによってアジア安保ネットワークの基盤を提供できるようにする」(75㌻)

 以上が屋良氏の唱える「具体的な解決策」なるものの柱です。
 端的に言えば、海兵隊を沖縄以外の地域に移す代わりに、日本が施設整備費を負担し続け、新たに高速輸送船も提供する。また金を出すだけでなく、日本(自衛隊)が米海兵隊と一体となって行動し、「アジア安保」に貢献する、ということです。すなわち、日本の米軍事費肩代わりの拡大、自衛隊と米軍の一体化の深化、日米軍事同盟のアジアへの拡大に他なりません。

 これは小沢一郎自由党党首(写真中)の年来の主張と通底するもので、屋良氏が自由党から出馬したことにも合点がいきます。

 注意しなければならないのは、これを一親米主義者の日米軍事同盟拡大論と片づけることはできないことです。
 それは、屋良氏が同じ自由党の玉城デニー知事の後継者として当選し、玉城氏も選挙で全面的に屋良氏を応援した経緯からも、屋良氏の上記の「解決策」が玉城知事の「対案」となり、安倍政権との「対話」の中で表明される可能性(危険性)があるからです。

 朝日新聞は3月27日付の朝刊1面で、「沖縄県、辺野古代案検討へ」の見出しでこう報じています。
 「玉城デニー知事は、新年度から辺野古移設に代わる案の検討を始める。県政課題に関する諮問会議の中で、政府OBら専門家に協議してもらう。…玉城知事が4月に立ち上げる諮問会議は『万国津梁会議』。…県幹部によると、協議内容は米海兵隊の運用や移転先などを想定。議論を進める中で、辺野古移設の代替案を検討する考えだ」

 「沖縄基地問題」の真の解決とは、普天間基地の即時無条件返還、沖縄からの軍事基地(米軍・自衛隊)一掃、そして「本土」や韓国はじめアジア諸国と連帯して、諸悪の根源である日米軍事同盟(安保条約)の廃棄へ向かうことです。

 それとは似ても似つかないどころか逆行する「解決策」なるものが、「沖縄県の対案」として提案されようとしています。この事態を、玉城氏や屋良氏を支援し当選させた「オール沖縄」陣営は拱手傍観するのでしょうか。


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