アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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玉城知事、自衛隊のオスプレイならいいのか

2019年04月13日 | 沖縄・米軍・自衛隊

     

 沖縄の玉城デニー知事は10日、日本記者クラブで会見し、オスプレイ(垂直離着陸輸送機)の沖縄配備について述べました。琉球新報(11日付)はこう報じました。

 「玉城デニー知事は…『自衛隊における運用と米軍における運用は全く異なる』と述べ、米軍普天間飛行場へのオスプレイ配備に反対する理由として米軍の運用上の問題を挙げた。県はこれまで、オスプレイの県内配備に反対する理由について開発段階から事故が相次いだ機体構造上の問題を指摘してきたが、玉城知事は構造上の問題には触れなかった

 琉球新報は2面2段の地味な扱いで、沖縄タイムスや「しんぶん赤旗」には1行もありませんから、知らない人は少なくないかもしれませんが、これはきわめて重大な発言です。

 琉球新報は遠慮がちに書いていますが、端的に言えば、玉城知事は自衛隊のオスプレイならいい、沖縄配備にも反対しない、という考えを示唆したのです。

 これに敏感に反応したのは産経新聞(11日付)でした。同紙は「自衛隊オスプレイ 玉城氏が容認示唆」の見出しで、こう報じました。
 「玉城デニー知事は…自衛隊が沖縄県内に垂直離着陸輸送機オスプレイを配備した場合の対応を問われ『自衛隊における運用と、米軍における運用は全く異なると認識している』と述べ、即座に反対しない考えを示唆した。…玉城氏は、自衛隊と米軍のオスプレイ配備が異なる理由として『(自衛隊は)シビリアンコントロール(文民統制)の中にある。憲法の範囲に置かれている自衛隊の配備と、米軍が配備し、騒音防止協定などがたびたび破られている状況における運用とは全く異なる』と説明した」

 玉城氏の「説明」は、自衛隊を「憲法の範囲内」と断言していることから根本的に誤っていますが、それはひとまずおくとしても、まるで自衛隊機なら安全で住民には被害を与えないように言うのは、沖縄の知事としてきわめて問題です。

 たとえば、自衛隊那覇基地だけをとっても、「航空自衛隊那覇基地は11日、2018年度下半期(18年10月~19年3月)の間、航空機から部品落下が5件発生したと発表」(12日付琉球新報)しています。事故・騒音被害に米軍機と自衛隊機の差がないことは言うまでもありません。

 また、航空自衛隊の最新鋭ステルス戦闘機F35Aが原因不明の墜落事故を起こした(9日)ことが、今まさに大きな問題になっています。玉城氏の会見発言はその事故報道の直後でした。

 明確にしておかねばならないのは、玉城氏の発言は、琉球新報が指摘するようにこれまでの沖縄県の立場と異なるだけでなく、「オール沖縄」陣営の最大の基盤である「建白書」(2013年1月28日)に反しているということです。「建白書」にはこう明記されています。

 「日米両政府は、沖縄県民の総意を踏みにじり…オスプレイを強行配備した。…開発段階から事故を繰り返し、多数にのぼる死者を出している危険なオスプレイを配備することは、沖縄県民に対する『差別』以外なにものでもない

 「建白書」が問題にしているのは、オスプレイの「運用」ではなく、「開発段階から事故を繰り返し」ている機体そのものの構造・機能であることは明白です。そして、同じアメリカ製のオスプレイの危険性に米軍も自衛隊もないことは言うまでもありせん。

 玉城氏の自衛隊オスプレイ容認示唆発言は、「建白書」に対する明白な違反です。

 さらに、日米安保条約の下で米軍と自衛隊の一体化が深まっていることは周知の事実です。沖縄の基地も、米軍と自衛隊の共同使用が進行しています。

 玉城氏自身、知事当選直後、「将来、自衛隊と米軍が基地を共同使用するときには、基地の使用協定を作りましょうという話が出てくるかもしれません」(2018年10月2日付産経新聞インタビュー=写真右)と述べ、沖縄基地の米軍・自衛隊共同使用を見通し、それを容認する考えを示していました。

 玉城氏の自衛隊オスプレイ容認示唆は、八重山諸島への自衛隊基地建設・配備強化を許さないうえでも絶対に見過ごすことはできません。

 「オール沖縄」陣営、知事選で玉城氏を支持した人々は、この玉城氏の「建白書」違反・重大な公約違反発言を黙認するのでしょうか。


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