アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「聖火リレー」「被災地」「自衛隊」そして「天皇」

2019年04月16日 | 天皇制と政権

     

 安倍首相は14日福島県を訪れ、来年3月に福島で行われる東京五輪聖火リレーについて、「福島の皆さんと共に復興五輪の開幕と、復興が進む福島の姿を世界に発信したい」(15日付共同配信)と述べ、聖火リレー出発に立ち会う意向を示しました(写真左)。

 進まない(進ませていない)震災復興を聖火リレーで隠ぺいし、逆に「東京五輪」と「被災地」を結び付けて国家と政権をアピールしようというものですが、この聖火リレーにはさらに重大な真相があります。

 それは、聖火リレーの事実上の出発点が、航空自衛隊松島基地(宮城県東松島市)になることです。ギリシャで採火された聖火が空路日本に到着するのが自衛隊松島基地です。
 松島基地に到着した「聖火」は宮城、岩手、福島の順で東北被災3県を回り、3月26日に福島で改めて「出発式」が行われます。

 「聖火」が日本に到着するのがなぜ自衛隊松島基地なのか。なぜ民間の仙台空港ではないのか。

 それを決めた東京オリ・パラ組織委員会の森喜朗会長(元首相)はこう述べています。
 「(自衛隊松島基地は)相当津波にやられたが、不屈の精神を示す象徴的な場所。救援物資の輸送など国際的にも有効に使われ、一番理想的」(2018年7月31日付産経新聞) 

 自衛隊の軍隊としての本質を隠ぺいし、「市民権」を得るために「災害出動」が利用されているのは周知の事実ですが、聖火リレーの事実上のスタートを自衛隊基地にすることによって、「東京五輪」「災害(東日本大震災)」そして「自衛隊」を結び付けようという思惑です。

 それだけではありません。自衛隊松島基地にはもう1つ、特別な意味があります。
 明仁天皇・美智子皇后が「3・11」以後、東北被災地訪問で最初に自衛隊機を使い、降り立ったのが松島基地なのです(2011年4月27日)。天皇の自衛隊基地利用はこれが史上初めてでした。

  当時の模様を朝日新聞はこう報じています。
 「航空自衛隊松島基地司令の杉山政樹が両陛下の宮城県訪問を聞いたのは、訪問の1週間ぐらい前だった。基地訪問は初めて。どうお迎えしたものか。…基地来訪を記念する何かを残したかった。…考えついたのが箸(昼食で使う-引用者)だ。前年にブルーインパルス50年記念で作った若狭塗の箸を用意した。…ブルーインパルスについての説明を聞くと、両陛下は『それはいいですね』と、箸を大切に持ち帰ってしまった」(2014年4月26日付朝日新聞「プロメテウスの罠」)

 以後、天皇は被災地訪問に頻繁に自衛隊機を使うようになりました(写真右は熊本の被災地訪問)。

 安倍政権が東京五輪を徳仁新天皇の国際的なお披露目の舞台にしようとしていることも言うまでもありません。

 もともと「聖火リレー」は、1936年の第11回ベルリン大会でナチスドイツのヒトラーが政治的宣伝のために始めたものです。
 それが84年後の2020年、安倍政権によって、「東京五輪」「被災地」「自衛隊」にさらに「天皇」の4者を結び付ける国家戦略の象徴的な舞台になろうとしていることに留意する必要があります。


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