アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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新元号決定過程で、天皇・首相共謀の重大な憲法違反

2019年04月01日 | 天皇・天皇制

     

 政府・メディア一体となった元号キャンペーンの中、安倍政権はきょう4月1日、「新元号」を閣議決定しますが、その過程で重大な憲法違反が行われたことを看過することはできません。

 安倍首相は3月29日、明仁天皇に「新元号選定」について「内奏」しました。天皇に続いて徳仁皇太子にも「報告」しました。
 メディアはこれを一連の手続きの一環であるかのように淡々と報じましたが、とんでもないことです。安倍首相による明仁天皇への「内奏」は、二重三重の憲法違反行為です。

  第1に、そもそも「内奏」とは「内閣から(天皇に)人事・外交・議会関係などの重要案件を申し上げること」(後藤致人愛知学院大教授『内奏―天皇と政治の近現代』中公新書)であり、大日本帝国憲法下の天皇主権の名残であって、主権在民の現行憲法下ではあってはならないものです。

  「内奏は戦前以来、天皇の政治行為の重要な要素を構成しており、戦後象徴天皇制においても内奏が残ったことは、長期にわたる保守政権下、昭和天皇の政治力を残存させることにな(った)」(後藤氏、同)

  すなわち「内奏」は、①天皇が行政府や立法府より上に君臨する②天皇の政治行為の場となるーという2重の意味で憲法に反しています。
 明仁天皇はその憲法違反の「内奏」を父・裕仁から忠実に引き継いでいるのです。

  第2に、「内奏」の内容は完全秘密です。首相が天皇に何をどう報告し、それに対して天皇が何を言ったのか、あるいは天皇の方から何か切り出したのか、その内容は主権者・国民にまったく知らされません。

  国民の「知る権利」の及ばない闇の空間が、天皇と首相によってつくられ、そこで重要な政治問題が話し合われている。これは現憲法下では絶対にあってはならないことです。

  第3に、今回の「内奏」には特別重大な意味があります。それは、そこで天皇が実質的に「新元号」を決めた可能性がきわめて大きいことです。

  「内奏」では「新元号選定の過程など」が説明され、時間は「約40分」だったと報じられています。「選定過程の説明」に「40分」もかかるわけがありません。新元号の複数の案を天皇に示し天皇の意見を求めたことは間違いないでしょう。そして、天皇の意見(要求)に対して首相が「ノー」と言えないことも自明です。 

 菅官房長官は新元号について、だれがどのような案を出したかは公表できないと言います。新元号の決定過程は完全に闇の中です。「有識者懇談会」など表向きのセレモニーにすぎません。決定過程を完全な秘密にするのは、天皇が実質的に決定するからではありませんか。

  天皇が新元号を決めることはもちろん、その決定過程に参画するだけでも、天皇の政治関与を禁じた憲法に違反することは明白です。

  改元のお祭り騒ぎの陰で、こうした天皇と首相の共謀による何重もの憲法違反が行われていることを、われわれは主権者として直視する必要があります。

  メディアは政府の元号キャンペーンのお先棒を担いでいますが、天皇と首相によるこうした重大な憲法違反の実態を暴露し追及することこそ、本来のジャーナリズムの使命ではないでしょうか。


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