今日の草履は、仙北市内の女性のオーダー草履です。お仕事に励むあまり足指を骨折してしまった職場仲間へ、励ましの贈り物なんですね。ご希望配色は完全おまかせでしたので、「優しい春の花」をイメージしてみました。病気やケガで気持ちが落ち込んでいるときは、優しく寄り添うのが一番ですからね。一日も早く完治し、こちらの草履が履けるようになることを私も願っています。
先日知人女性がfacebookに投稿していたのは、同じ職場の一人が周囲の手を借りなければ仕事が進まないうえに、それに対してなんら感謝の意思がないのを憤慨したものでした。私の周囲でそういう人はすぐ思い浮かばないものの、世の中を探せばいるでしょうね。その知人も「見返りを期待しているのではない…」と記述している通り、ひとまずは「ありがとう、助かりました」の言葉が欲しいのでしょう。
児童心理学の世界で著名な精神科医が著書や講演で言うのは、「人と人の関係はギブアンドテイクで初めて成立する」というものです。商いであれば商品やサービスに相当する対価を支払うことで、売り手と買い手の関係が成立します。雇用主と労働者の関係もその通りですね。これは「キブアンドテイク」がはっきりしている例です。
直接金品のやりとりが発生しない患者さんと看護師さんの関係も同じで、一生懸命職務に励む看護師さんに対し患者さんから「ありがとう」の言葉があれば、それで「ギブアンドテイク」の関係が成り立つといいます。
これは子育て真っ最中の親子関係にも当てはまり、どんなに苦労でも子どもの寝顔を見ればそれだけで癒される。これも立派な「ギブアンドテイク」なんですね。つまり与えるものと与えられるものが双方向からあることが、人と人の関係を維持する絶対条件というわけです。どちらか一方が与え続ける関係は、「心」を持った人間にありえないのでしょう。
「今日の草履」を贈る女性も、相手からなんの見返りを求めるものではありません。草履を手渡されたとき、心からの「ありがとう」と「がんばります」の言葉があれば、それだけでお二人の関係はずーっと続くものと確信しています。