今日の草履は、彩シリーズ23cm土踏まず付き〔四阡六百円〕
ベージュと淡いピンクの中間といった感じでしょうか。「色」には赤ともつかない茶色や黄色ともつかない緑など、まさに多彩です。そうしたハッキリしない曖昧さにも、やはり持つイメージというものはあって、今日の草履などは「優しさ」が表現されていますね。
二日続けて好青年と出会いました。今日の青年は札幌で生まれ育ち、地元の大学をたった今卒業したばかりといいます。四月から入社が決まった企業も、やはり地元の札幌市。
『草花を観るのが大好きで、やっぱり北海道から離れられないと思いました』。屈託なく笑う顔を見て、ひとまず満足のいく進路に出会えたんだなと感じました。
いっときは東京で就職活動をしたんだそうです。でも街の空気や人の顔、目にするもの耳にするものすべてが、『自分の暮らす場所じゃないな』と感じたんですね。
『東北の日本海側ってはじめて来たんですけど、みなさんあったかいですよねっ』。草履実演から目を離さずそう言う青年に、私はまたも好感を持ったわけです。
学生さんやお若いお客様に対して、私は「母の日」をよく言います。もちろん強く勧めるのではなく、「いつかこの草履を思い出すことがあったら…」の前置きを付けて、『家事をするお母さんは、とっても喜んでくれると思う』と伝えるんですね。
今日の青年にも同じように話すと、ぱっと目を見開き、『それっ、いいですねっ。初めてもらうお給料で母に贈ります』。連絡先や注文方法をしっかり訊いていましたから、彼はきっとオーダーの連絡をくれるでしょう。
『大事な息子にもらった草履だから、お母さんはもったいないって履かないかもね。でもちゃんと履くように草履職人が言ってたって伝えてよ』と言うと、『あぁ、それありそうです。もったいないから使わないっていうの、よくあるんですよ』と笑う青年。
実演席では幸いなことに、こうした好青年との出会いが多くあります。おそらく草履を編んでいるおっさんに関心を示すくらいですから、基本的にものづくりが好きな日本男児なんでしょう。
今日の青年も、『ものづくりを見ているのって、ぜんぜん飽きないですよねぇ』と言っていました。編みあがった片足を手に持ち、『うわぁ、感動ですよぉ』とも言っていました。
わが家の娘たちのお婿さんは、もしかしたら私が最も見つけ易い位置にいるんじゃないですかね。
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