今日の草履は、埼玉県鴻巣市にお住まいのおばさまからの、お電話によるオーダー草履です。最近角館を旅されたおばさまは、ご自分用だけ草履をお求めとのこと。ご帰宅後それを見た二人の娘さんが、私たちも欲しいとなったんですね。おばさまの表現は、『娘に取られましてねぇ』。よくあるケースなんです。
3足揃って明日の便で出発します。早速履いてくださいね~。
東京からお越しの女性ひとり旅。『うわ~、草履ですよねっ。見てていいですか?』。屈託のない笑顔は、その年齢の若さが髪の色でも分かりました。訊くと二十歳、まさにわが家の双子と同い年ですよ。
女性は仕事関係の知人宅に泊まりながら、北東北から北海道へと旅が続くと言います。角館の印象を「人の良さ」に見た女性は、西宮家に着くまで何人もの年寄りと会話してきたそうです。若年にして、旅の愉しさを熟知していますよ。
その女性と出会う一時間ほど前でしたか、還暦ほどのおばさまと同じようなおしゃべりをしたものです。おばさまは、『東京に住んでいると、知らない人と話すなんて普段はないでしょ。旅ではそこが大違いよね。誰とでも話ができるような気になっちゃうわ』。
二十歳の女性にも話したのですが、旅は非日常を愉しむものであり、「旅の恥はかき捨て」なんて言葉もあります。地元民にどう思われるかなんて気にするより、興味がわいたことにはどんどん向かっていくべきでしょう。
私が実演席で出会うだけでも、若い女性のひとり旅は珍しくありません。丸太椅子に腰を下ろして草履実演に見入るくらいですから、その人間性はチャラチャラしていませんね。そしてそんなときが、むしろ「素の自分」なんでしょう。
帰り際『また遊びに来たら寄って』と言うと、『はい~、ぜひっ。そのときはきっと金髪をやめてると思いますぅ~』。
同い年の娘がいるオヤジには、その言葉も嬉しかったりするわけですよ。