緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

モンポウ作曲「歌と踊り第13番」の練習開始

2021-12-04 21:51:53 | ギター
オフになっていた社会人マンドリンクラブから来年の定期演奏会の楽譜が送られてきた。
そろそろ練習しなければならないのだが、未だ手を付けていない。
演奏会まで約10か月ほどあるから未だいいか。慌てることはない。

今年は独奏曲もいくつか取り組んできたが、今回本格的にレパートリーにしようと思った曲がある。
モンポウ作曲「歌と踊り第13番」。



フェデリコ・モンポウ(1893-1987)のピアノ曲の傑作、「歌と踊り」の中の1曲であるが、第13番と第15番のみピアノ曲ではない。
第13番はギター曲で、「歌」は「鳥の歌」(El cant dels ocells)という副題が付けられている。



チェロの巨匠、カザルスが広めたことで知られる、あの有名なカタロニア民謡の「鳥の歌」を主題に作られたものだ。

「歌と踊り第13番」はナルシソ・イエペスからの委嘱により作曲されたと言われている。



アセンシオの組曲「内なる印象」やカタロニア民謡集とともリリースされた70年代のアルバムで聴くことができる。
イエペスは10弦ギターによる音域で録音したが、出版されている楽譜は10弦用ではなく6弦用のものだ。
イエペスの10弦による演奏は、この6弦のための出版楽譜の低音の一部を6弦では出せない低い音域にした、という単純なものではなく、和声、リズムを始めとしてかなり出版譜と異なる内容で弾いているのが興味深い。

出版楽譜の校訂・運指付けを行ったのはイエペスではなく、ホルディ・コディーナ(Jordi Codina)という人の名前が記載されている。



つまりこの出版譜にはイエペスの関わりは無いということだ。
イエペスが録音した内容と出版譜の内容に何故相違があるのか、その理由を説明した資料等は無い(探せばもしかしたらあるかもしれないが)。
しかしこのいきさつが何であったかは知りたい。

ホルディ・コディーナのことをネットで調べてみたらスペインのギタリストらしいことが分かった。
Youtubeに演奏が投稿されていたので聴いたが、言っちゃ悪いけど上手いとは言い難かった。
恐らくこのコディーナの校訂による譜面がオリジナルなのであろう。
ただイエペスにしてみれば、この譜面どおりにギターで弾くにはあまりにも適していない(シンプル過ぎて構成力に欠ける)、つまり音域を狭めたピアノ用の和声と進行(曲の流れ)を持つものだと感じたのではないかと推測されるのである。

10弦ギターによる演奏で出版譜と顕著に異なる箇所は、踊りの中間部、ちょっと神秘的で不安定な雰囲気を持つフレーズに移り変わってからの部分であり、この部分はギターの特性をかなり意識した内容になっている。
この部分をイエペスは彼のみしか弾けないような神業的な弾き方で演奏しているが、果たしてこの部分は作曲者のオリジナルなのか、それともイエペス独自の解釈を取り入れてオリジナルを変更したものなのか、謎だ。
私はイエペスの演奏の内容の方が優れている(この曲をギターの魅力をもっと引き出せるものとした)と感じている。

この曲の録音をイエペス以外で探し求めてきたが、意外にも少ない。しかもいい演奏が無い。
理由は、名曲に相応しい曲であるにもかかわらず、ギターで弾くには相当難しいからだ。
やはりピアノ専門の作曲家が作ったギター曲らしく、ギターではかなり弾きにくい箇所が多い。
複雑な和声で、左手の指使いが困難な和音が多いため、和声が途切れてしまうのだ。
音を保持して弾くのはかなり大変である。

それでもやはりこの曲をものにしたい。
この曲の楽譜を買ったのが今から20年くらい前で、それ以来、何度か通しで弾いてみたけどレパートリーになるまでには至らなかった。
さすがに今ものにしておかないと、これからどんどん弾けなくなっていくだろうから今のうちに弾けるようになって録音に残しておこうと考えたわけである。

そんなことで、この「歌と踊り第13番」の練習を本格的に開始した。
まず「歌」の冒頭のフレーズを弾いてみる。





録音してみた。

2021年12月4日、モンポウ作曲「歌と踊り第13番」冒頭部分を録音、和音が鳴りきれなく途切れてしまった演奏

2小節目、2拍目裏の和音は弦幅の広いギターだと厳しい。
普段弾いているスペイン製ギターだと届かないことが多いので、国産ギターで弾くことにした。
8小節目と10小節目の和音はかなり押さえが厳しい。鳴りきらない音が出てくるが、それを鳴らすのはかなり大変だ。

「歌」の後半は、旋律部が低音に移り変わるが、やはり和声の押さえが難しく、指の拡張を強いられる。





ここもちょっと録音してみた。

弾くのが精いっぱいというレベルの「歌」の後半部。和声の美しさ、神秘さを出せるようになるのはいつのことか。

今日はこの辺にしておこう。
まずは和音が途切れないように保持することを意識して弾くことを目標に練習していこう。


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