緑陽ギター日記

趣味のクラシック・ギターやピアノ、合唱曲を中心に思いついたことを書いていきます。

ギター録音(6)-ソル練習曲「月光」-

2020-05-04 20:05:19 | ギター
ソルの数多い練習曲の中でも、最も優れていると思うのは次の3曲だ。

・Op.6-11 ホ短調
・Op.29-1 変ロ長調
・Op.35-22 ロ短調

いずれもアルペジオと共にメロディーラインのある曲だ。
Op.35-22 ロ短調は別名「月光」として知られているが、この曲名は後になって別の人が付けたものである。

ソルの練習曲を教育目的に編集したギタリストとしては、セゴビアやイエペスの他にサーインス・デ・ラ・マーサやカルレバーロ等が知られているが、圧倒的に使用されているのがセゴビア編の20の練習曲だ。
Op.35-22「月光」に関して注意しなければならないのは、セゴビア編はこの曲の速度指定を恣意的に変えてしまっていることだ。
セゴビア編の速度指定はモデラートであるが、オリジナルはこの速度でない。
アレグレットである。



イエペス編はオリジナルのアレグレットを指定している。



セゴビア編が圧倒的に広まったため、この曲をモデラートの速度で弾く奏者が多いように思う。

確かにモデラートの速度の方が情感豊かに演奏できるのかもしれない。
セゴビアはモデラートの方がこの曲のもつ情感を表現するのにふさわしいと考えたに違いない。
しかし作曲者であるソルはアレグレットを指定した。
ソルはこの曲に何故、アレグレットの速度を指定したのか。
アレグレットの速度だとかなり速く弾かなければならず、全体的にアルペジオの練習曲のようにとらえられるかもしれない。
すなわち各音符の音一つ一つを均一にする弾き方である。
しかし譜面をよく見ると、1拍目は2分音符、3拍目は4分音符にもなっており、この意味するところは上声部がメロディーラインとなっているため、この部分を浮かび上がらせるように弾かなければならないということだ。
そのためイエペスはこの上声部のメロディーラインをアポヤンドで弾くよう指示している。しかもほとんどのメロディーを②弦で。
(楽譜上で、指先の中心に横線のイラストを挿入している)



つまりこの曲はアレグレットというかなり速めの速度でかつ、メロディーラインを浮き彫りにするように弾けるように練習しなさい、ということが練習課題として与えられているのではないかと思うのである。

今日、この曲を録音してみた。
使った譜面はイエペス編(私はイエペス編の方が優れていると思う)。
上声部の殆どはアポヤンドで弾いている。
前回同様、緊張で満足のいく出来にはならなかったが、とりあえず下記にリンクを貼っておく。
録音というのはある程度慣れが必要なのかもしれないが、それにしても膨大なエネルギーを消費するものだ。
(しかし何も家で録音するのだから、そんなくそまじめに緊張しなくてもいいのに)

【ソル練習曲「月光」 2020年5月4日録音】

あと2年くらい前に録音したやつが見つかった。
この録音を聴くとモデラートに近いかもしれない。
同じくイエペス編。
(出来は悪いな)

【ソル練習曲「月光」 2018年10月録音】


ソルのこの曲は、聴いていても心象風景とか、具体的な感情といったものがほとんど湧き起こらない。
短調の純粋な美しさ、のみが結晶化(変な言い方か?)したような印象。
だからあまり抑揚をつけず、淡々と弾く方が良いと自分は思っている。

【追記】

あとやっぱりこの曲は、2重奏のように弾かなければならないように思う。
単音の上声部と伴奏のアルペジオがそれぞれ個別に重奏するようなイメージか。
初級者の練習曲とされているけど、シンプルそうに見えて結構難しい曲だと思う。
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