先日、NHKで阪神淡路大震災で被災した人々の心のケアをするために現地で診療に当たっていた精神科医のドラマを見た。
断片的にしか見ていなかったので、ストーリーはあまり覚えていないのだが、あるシーンが頭に焼き付いた。
心のケアを受けたある若い女性は、幼い頃から親から虐待を受け、リストカットを繰り返し、自分を守るために多重人格者となっていた。
この若い精神科医はその女性の、自己評価が低く、自己否定が強く、自分を責めるそのあまりも不条理な生き方を目の当たりにし、苦悩する。
女性が「こんな病気になったのは、私が弱いからですよね」と言う。
精神科医は「違う。違うんだ。とても耐えられないような苦しさと悲しさの中で、それでも生き延びる方法を見つけようとしたんだ。あなたは生きる力が強いんだ」と返した。
そして精神科医は女性が立ち去った後で、こみ上げてくる感情を必死に押さえようとしていた。
このシーンを見て、私が30代の半ばから終わりまで5年間受けた臨床心理のカウンセラーのことを思い出した。
当時のある日のカウンセリングで、私が対人恐怖の耐え難い苦しみを表出したときだったと記憶している。カウンセリンが終わり診療代を払ったあとで、そのカウンセラーは先の精神科医と同じようにこみあげてくる感情を必死に押さえようとしていたのだった。
恐らくこの感情とは今思えば、何の落ち度のない人間が、この心の苦しみを背負わなければならなくなったその不条理さに対する怒り、悲しみ、それに対して自分がすぐに解決してあげられない無力さ、無念さを表すものだったと思う。
このカウンセラーは有名な大学の大学院を出て臨床心理士となり、大きな病院の副院長にまでなった方でベテランの方だった。
そして私が27歳の頃だったと思うが、東京大田区大森という所にあった山王教育研究所というところで、小川さんという名前の方にカウンセリングを受けたことがあった。
たった1回だけだったのであるが、今でもその小川さんから言われた言葉が忘れられない。
小川さんはこう言った。
「あなたはよくここまで生きてきましたね。あなたがここまで耐えて生きてきたというのは並大抵のことではないんだ。普通の人は耐えられないことなんですよ。」
私はこの言葉を一生忘れないだろう。
後で分かったのだがその小川さんとは、当時、上智大学の臨床心理学の教授で臨床心理の分野では日本で屈指の方だった。
今、素人のような方がお金もうけ第一主義で心理ビジネスを展開する動きが多数起きていることを危惧する。
心の病や心の苦しみに対峙するとは、そんな生易しいものではない。
真剣にクライアントに向き合ったカウンセラーは早死にすると聞いたことがある。
だから、今の臨床心理においてはカウンセラーが主体となって一定の方法で進めるやり方がかなり導入されている。
クライアントの苦しみに向き合うのではなく、誰に対しても一定の手順に従って進めていくようなやり方であるのだが、経験上、こんなやり方で解決など出来るものではない。いっちゃ悪いけど茶番のようなものなのだ。
人の心に変化を及ぼすのは、心の苦しみというものが真に理解出来ている人の、真剣、真摯な思いのみと言っても過言ではない。
何も混じらない、まごころ、というのだろうか。
ビジネス第一主義のような人に人の心を変えることは出来ない。
断片的にしか見ていなかったので、ストーリーはあまり覚えていないのだが、あるシーンが頭に焼き付いた。
心のケアを受けたある若い女性は、幼い頃から親から虐待を受け、リストカットを繰り返し、自分を守るために多重人格者となっていた。
この若い精神科医はその女性の、自己評価が低く、自己否定が強く、自分を責めるそのあまりも不条理な生き方を目の当たりにし、苦悩する。
女性が「こんな病気になったのは、私が弱いからですよね」と言う。
精神科医は「違う。違うんだ。とても耐えられないような苦しさと悲しさの中で、それでも生き延びる方法を見つけようとしたんだ。あなたは生きる力が強いんだ」と返した。
そして精神科医は女性が立ち去った後で、こみ上げてくる感情を必死に押さえようとしていた。
このシーンを見て、私が30代の半ばから終わりまで5年間受けた臨床心理のカウンセラーのことを思い出した。
当時のある日のカウンセリングで、私が対人恐怖の耐え難い苦しみを表出したときだったと記憶している。カウンセリンが終わり診療代を払ったあとで、そのカウンセラーは先の精神科医と同じようにこみあげてくる感情を必死に押さえようとしていたのだった。
恐らくこの感情とは今思えば、何の落ち度のない人間が、この心の苦しみを背負わなければならなくなったその不条理さに対する怒り、悲しみ、それに対して自分がすぐに解決してあげられない無力さ、無念さを表すものだったと思う。
このカウンセラーは有名な大学の大学院を出て臨床心理士となり、大きな病院の副院長にまでなった方でベテランの方だった。
そして私が27歳の頃だったと思うが、東京大田区大森という所にあった山王教育研究所というところで、小川さんという名前の方にカウンセリングを受けたことがあった。
たった1回だけだったのであるが、今でもその小川さんから言われた言葉が忘れられない。
小川さんはこう言った。
「あなたはよくここまで生きてきましたね。あなたがここまで耐えて生きてきたというのは並大抵のことではないんだ。普通の人は耐えられないことなんですよ。」
私はこの言葉を一生忘れないだろう。
後で分かったのだがその小川さんとは、当時、上智大学の臨床心理学の教授で臨床心理の分野では日本で屈指の方だった。
今、素人のような方がお金もうけ第一主義で心理ビジネスを展開する動きが多数起きていることを危惧する。
心の病や心の苦しみに対峙するとは、そんな生易しいものではない。
真剣にクライアントに向き合ったカウンセラーは早死にすると聞いたことがある。
だから、今の臨床心理においてはカウンセラーが主体となって一定の方法で進めるやり方がかなり導入されている。
クライアントの苦しみに向き合うのではなく、誰に対しても一定の手順に従って進めていくようなやり方であるのだが、経験上、こんなやり方で解決など出来るものではない。いっちゃ悪いけど茶番のようなものなのだ。
人の心に変化を及ぼすのは、心の苦しみというものが真に理解出来ている人の、真剣、真摯な思いのみと言っても過言ではない。
何も混じらない、まごころ、というのだろうか。
ビジネス第一主義のような人に人の心を変えることは出来ない。