世界の中心で吉熊が叫ぶ

体長15センチの「吉熊くん」と同居する独身OLの日常生活

映画「あんのこと」

2024年06月16日 23時24分14秒 | Weblog
まったく、とんでもない映画を観てしまったものだ。
観終えた後3時間ぐらい経過しているのに、いまだに主人公・杏のことを考えてしまう。

「あんのこと」@丸の内TOEI

なんで観ようと思ったのかは忘れた。私は民放を見ないのでCMでないことは確か。とすると、ネットで本作品を知ったのだろう。
寂寥感溢れる女性の画像や添えられたキャッチコピー「彼女は、きっと、あなたのそばにいた」を見て「これは観なくては」と思ったのである。




(緑内障進行により、映画では後ろの方の席を選ぶようになった)


結果からいうと、個人的に★★★★★の作品だった。

母親にDVされながら育ち、12歳から売春をさせられ覚せい剤中毒になった団地住まいの杏(河合優実)。21歳。
小学校もろくに行っていなかったので漢字が書けない。
刑事の多々羅(佐藤二朗)に助けられて薬物中毒者を更生させる団体に通い、やがてシェルターに脱出。
団体にはいつも記者・桐野(稲垣吾郎)が取材に来ている。

学ぶこと、働くことの楽しさを知った杏。
介護施設で働いたお金で日記帳を買う。
ひらがなでその日を綴る。多々羅に言われた通り、覚せい剤を打たなかった日は日付に〇を付ける。
(ペンにクマちゃんのアクセサリーが付いててかわいかった!)

多々羅、桐野、杏。
3人が交わる様子がほほえましく、カラオケで桐野が「情熱の薔薇」を歌うシーン、3人で街中華を楽しむシーンに心が緩んだ。
でもそんな安寧も長くは続かない。
「ある秘密」をきっかけに3人がすれ違っていく様子に虚無を感じた。
杏のささやかな幸せは、人の裏切り、そしてコロナ禍に奪われる。

コロナで職場や学校は閉鎖。不安と孤独を募らせる杏に同じシェルター住まいの女から男児(隼人)を押し付けられ、杏なりに一生懸命育てていく。
料理を食べさせ、苦手なものや食べないものをメモ。

しかし隼人と散歩中にDV母に発見されてしまい実家に強制送還。
「稼いで来いよ」と言われ、再び体を売る。
お金を持って帰宅するも隼人の姿はもうなくて…。
隼人を奪われたときの杏の表情で涙腺崩壊。自分の子供じゃないのに母性が芽生えていたんだねって…。
他人の子供に母性が発動する映画「八日目の蝉」を彷彿とさせる。

絶望の中、シェルターで隼人のおもちゃを片付けたあと、覚せい剤をキメる杏。
先述の隼人メニューのメモを抱えるようにして窓辺へ。
ブルーインパルス(医療従事者に感謝)が駆け抜ける空を見てベランダに出た杏は…。





エンドロールが終わってもなかなか席を立つことができないほどの没入感だった。
トイレに入った瞬間、涙がじわ~っと溢れてきた。
杏役の河合優実がとにもかくにも最高に上手だった。
国宝級の表現力。


積んでは壊される積み木ゲームのように、本当にやるせなくなるストーリーで、この気持ちをどこにぶつけたらいいのか、帰りの電車内で逡巡。パンフレットを買ったが読むとじわっと涙が滲むので閉じた。

驚くのはこれがほぼ実話で新聞記事がモチーフとなって作られていること。
2020年のコロナ禍。多くの「杏」みたいなコはたくさんいたはずだ。
「あの時、私は杏みたいなコに意識を向けていたか?」と自問するも、自分のことでいっぱいいっぱいだったよなと思って、鬱。

本作品は冗長なところがなく、とてもわかりやすくて、でも薄っぺらくなくて100点満点の映画だった。
監督、出演者、スタッフの「(世間に見過ごされがちな)杏の存在」を強く訴える気持ちがスクリーンいっぱいに広がっていたのを感じた。

実際、街中で杏みたいなコを見ても、私はやはりスルーしてしまうだろう。
でもこの作品を一人でも多くの人に見てもらって「杏みたいなコ」の認知度が高まれば、少しぐらい社会が動くのではないかと願ってしまう。

映画『あんのこと』予告篇 6月7日(金)公開



今週いっぱいは引きずりそう…。
PG12作品だが、作中の杏が最初に売春をしたのは12歳なんだぜ…?と複雑な気持ちになった。

映画「誰も知らない」を見たときを思い出す、この後味の悪さ。(でも観てよかった)
あと、杏の育った環境が永山則夫の生育環境に似ていると感じた。



今日は映画の前に妹宅へ誕生日プレゼントを私に行った。
明日、妹は44歳になる。
ちょうどお昼寝中だったのでガレージにプレゼントを置いておいた。
駅までテクテクと歩いていたら妹夫に遭遇!!
妹のためにケーキを買って、その帰りだという。
ちなみに私のプレゼントはユニクロのエアリズムのパジャマ。
着心地が良いので妹にも着てもらいたかったのだ。
二人の子供を育てている妹は自分のことは後回しモードなので少しでも快適に睡眠時間をすごせますように、という願いも込めて。

昼食はすき家のめかぶおくら牛丼。ネバネバしててさっぱりしてて本当に美味しかった。


今日は固定資産税も支払ったし、妹へのプレゼントも贈れたし、映画も観られたし、手紙も書けた。

できたことがたくさんで満足というか安心感でいっぱい。

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