晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宮部みゆき 『希望荘』

2021-04-25 | 日本人作家 ま
気が付いたらもう今年の3分の1が終わりそうです。充実したかというとあまりしてないし、じゃあ不満だったかというとそれもないし、攻めも守りもせず、ただ流れていた、そんな4か月でしたね。まずそれができる環境というのが有り難いんですけどね。

近況報告。

さて、宮部みゆきさん。今作の『希望荘』は、杉村三郎シリーズの3作目「ペテロの葬列」に続く4作目。

3作目を読んでない、いやこのシリーズをまだ読んでないという方には申し訳ありませんが、豪快にネタバレをぶっこまさせていただきますと、杉村は今田コンツェルンの会長の娘と離婚し、会社を辞めます。娘は母親が引き取っています。さて杉村さん、三十代後半で晴れてバツイチ無職となったわけでありますが、なんと探偵業をはじめることに。

といっても、もともと小さな出版社の編集者から転職して大企業の社内報を作ってきたという経歴の杉村が、ツテもコネもなくいきなり「探偵会社はじめます」などといっても難しいわけでして、その経緯は後で出てきますが、(まともな)調査会社の「オフィス蛎殻」というところから下請けがメインで、さらに杉村自身が調査する(探偵業務)と並行して、というかたちで独立開業します。

そんな杉村のもとにご近所が依頼を持ってきます。その内容とは、幽霊話。それはアパートに住んでいて亡くなったおばあさんで、(亡くなった)とはいっても、管理人に「家賃が払えない、もう生きていかれない」と電話で言い残して部屋からいなくなっていたそうで、ということは、おばあさんが確実に故人であるとはいえず、不動産会社に聞いてみると、アパートに入居する前はホームレスになる寸前の様な状態だったそう。で、話のよれば、娘がいるけどカルト宗教にはまって金をせびるようになり、定期預金も下ろされ、さらに年金受給口座のキャッシュカードも取られ、つまり「逃げてきた」ようなかたち。
杉村は、さっそくおばあさんの娘に会いに前におばあさんが住んでいたアパートへ。すると中には3人の女性が。娘ではありません。聞けば「わたしたちはスターメイト」と言い、部屋には(銀河の精霊)(アトランティスの聖女の御言葉に耳を傾けよ)などと胡散臭さ満載で・・・という「聖域」。

次の依頼は、老人ホームに入居していてつい先日亡くなった父親の息子からで、依頼内容は、父が生前「人を殺したことがある」と告白した、というのです。息子は都内でレストランを経営していて、その息子が父から直接聞いたわけではなく、担当の介護士が父といっしょにテレビを見ているとワイドショーで殺人事件の話題をやっていて、すると「俺はよく知ってる、そんなつもりはなかったんだけど、つい頭に血がのぼって手を出しちまった・・・」と話したというのです。はじめはドラマの見過ぎで自分の過去と混同しちゃってるのかなとも思ったそうですが、真相も聞けずに亡くなってしまいます。息子から聞いた父の情報と、父と介護士の会話の中から、父の(告白)した事件が起きたおおよその年代がわかり、殺人事件を調べますが・・・という表題作の「希望荘」。

新宿駅で「杉村さーん」と声をかけられます。杉村も「店長、お久しぶりです」と答えます。(店長)こと中村さんは、杉村の実家のある山梨県某市の地元農産品の直売店(なつめ市場)の店長。杉村は、離婚と退職をして、杉村の父親が病気でもう長くないということで看病も兼ねて実家に戻ります。そこで(なつめ市場)で働くことに。そんなある日のこと、地元で蕎麦とほうとうの人気店(伊織)の店主夫婦が注文の品を取りに来ません。(伊織)に行ってみると、中には妻だけがいて、様子がおかしいので聞いてみると「夫が不倫をして出て行った」と言って気絶します。
後日、杉村は配達にでかけます。配達先は(蛎殻様)という別荘に滞在している人で、杉村が注文の品を届けると、「どうも、蛎殻です」と出てきた家主はまだ若く、「杉村さんにお会いしたかった」といいます。はて、どういうことかと思ってると、蛎殻は東京で調査会社を経営していて、じつは(伊織)の夫婦の件の調査を受けようとしていて、そこで蛎殻は杉村のことを調べ、協力してほしい、というのですが・・・という「砂男」。

そんなこんなで、東京に戻って「杉村探偵事務所」を開業したのですが、東日本大震災から2か月が過ぎ、「希望荘」に出てきた依頼人の高校生の息子の知り合いという女子高生がやって来ます。依頼内容は、母親の付き合ってる人が震災以降、行方がわからない、というもの。前日に「東北に行く」と言い残したそうで、彼はアンティークショップを経営していました。店は現在、バイトが管理していて、さっそく行って話を聞くと、店長には名古屋に兄がいて、その兄から店のことをいろいろ指示されているよう。なにはともあれ、その(お兄さん)に会うことに・・・という「二十身」。

杉村三郎は、今作で探偵業をはじめることになったので、今作より「探偵もの」というカテゴリになるのでしょうが、もともと杉村は探偵になりたかったわけでもありません。ただ過去3作で、本人が望む望まないに関わらず「厄介ごとに巻き込まれる」というか「巻き込まれやすい」ということがどうやら認めざるを得ないとようやく決心したといいますか。
このシリーズはこれで完結ではなく、続編が出ているようなので、またネットショップで注文しますか。
コメント
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